私が安倍元総理に「耳が痛い」話でも進言できた訳 内閣参与時代に実践した「正論の通し方」とは?

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したがって、安倍さん本人の主観から考えれば、もともと考えていたことを藤井さんに詳しくまとめてもらった、と感じていたとしても不思議ではありません。というか、そういうように思ってもらうように、こちらの正論を解説したわけです。

安倍さんが賛同してくれたことが、デフレ脱却・防災・インフラ論が正論として世間に届く大きな契機となったわけで、それによって国土強靱化基本法ができ、担当大臣が設置されると同時に、デフレ脱却論はアベノミクスという形でまとめられていきました。

こうして安倍さんに、デフレ脱却論などを理解してもらった後は、その事実、つまり「安倍さんが、この正論の実現を望んでいる」という事実を、参与としてさまざまな人に伝え、安倍さんが通そうとした正論を敷衍する「お手伝い」を、内閣官房参与として進めていったわけです。

どんな世界であれ、組織の中で自分の意見を通すとなれば、相応の戦略が必要です。

基本は上の立場の人間が採用したくなる装いをすることです。ひと目で見てその内容がわかり、上司の志向ややろうとしていることに反せず、むしろそれを補強する内容であることが大切なのです。

心のある上司を巻き込む

私の場合は、安倍さんにかなり初期の段階で提案し、理解を得たことがその後の展開にいい影響を与える結果となりましたが、皆さんの場合も同じだと思います。直属の上司か、あるいはもっと上の人に持っていくか、自分の組織に合わせた選択をするべきでしょう。

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上司のなかに心ある人がいるなら、その人に正論を理解してもらい、その人を軸に正論の敷衍活動を展開する――これは、どこの組織でも通用する、極めて一般性の高い正論の通し方ということになるものと思います。

もちろん、ことはそうやすやすと運びません。どうしようもない上司ばかりということもあるでしょうし、理解してもらった上司が力がない人だったということもあるでしょう。

ただし、こうした展開を企図するうえでの大前提があります。それは皆さんの主張が「正論」でなくてはならないという点です。美しい和音を聞けば、誰もが美しいと感ずるように、それが「正論」であれば、相手が素直でありさえすれば、誰もが共感せざるを得なくなるのです。それこそが、正論の「強さ」なのです。

藤井 聡 京都大学大学院工学研究科教授

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ふじい さとし / Satoshi Fujii

1968年、奈良県生まれ。京都大学大学院工学研究科教授。京都大学工学部卒業、同大学院修了後、同大学助教授、イエテボリ大学心理学科客員研究員、東京工業大学大学院教授などを経て、2009年より現職。2012年から18年まで、安倍内閣において内閣官房参与。2018年よりカールスタッド大学客員教授、並びに『表現者クライテリオン』編集長。著書に、『こうすれば絶対よくなる! 日本経済』(田原総一朗氏との共著・アスコム)、『ゼロコロナという病』(木村盛世氏との共著・産経新聞出版)、『なぜ、日本人の9割は金持ちになれないのか』(ポプラ社)など多数。

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