日本復活には「20歳で大学卒業」を標準にすべきだ 経済成長のために「賃金上昇は必須」ではない

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こう書くとビジネススクールの宣伝みたいだが、要は何を勉強してもいいと思う。好きなことをすればよい。

むしろ実学よりも、大学でないとできない深い学問をやることを個人的には勧めたいが、まあ何でもいい。働いてみて、自分がやりたい、必要と思う勉強を、学問を、意欲を持って取り組むことができる。そして、みんながいろんな企業を経由して、いろんな経験をつんで、その後、さまざまなことを学んで、25歳をすぎて本格的に就職する。これなら、年齢層は近くても、多様性は現在よりは増えているはずだ。

(3) の人的資本蓄積も、結局、企業負担のOJTや研修に期待できないとなれば、自分でやるしかないし、そうなると「学校」というものが中心になるだろう。

日本人には観察して思考する基礎が欠けている

しかし、これは個人的には、大学、大学院に期待するのではなく、幼児教育と小学校への投資を提案したい。今、私がビジネススクールで最重要視して教えていることは、観察力、思考力である。企業経営のケースディスカッションをしているが、それは題材にすぎない。要は、自分の目と頭で、幅広い視野で根本から世の中を観察し、いちばん大事な問題を発見し、それについて、普通に先入観なく考える、ということである。

これが決定的に日本の人材に欠けている。コロナ対応も、政治に関する議論も、企業経営も、みな日本人の個々人の思考停止、いや思考拒否、いや思考能力、意欲ゼロ、思考嫌いから来ている。観察、思考の基礎は幼少期に培われる。それが日本人に欠けている。留学生、欧米、アジアの交換留学のMBAの学生は、知識や専門能力は日本人学生ととくに変わらない。だが、観察、思考を自ら行う、ということでは決定的に上だ。頭が悪そうに見えるやつでも、悪いなりに自分で観察し、思考する。それが優秀な日本人の学生にはない。これは国家の危機だ。

ということで、幼児教育、小学校教育に投資すべき、というのが提案だ。情報やエクセル、プログラミング、語学、などは必要に応じて、いつでも自分ですぐにできる。これらの観察力、思考力は子供のときに身につけないと取り返せない。

教育論になってしまったので、これはまたいつか別の機会で(今回は競馬コーナーはお休みです。ご了承下さい)。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

小幡 績 慶應義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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