"動的な独占"こそが、技術革新を加速する ピーター・ティールが語る「成功する起業」
――そういうアイデアが浮かんだ後、ビジネスとして成功させるために必要なことは、教育によって得られるものでしょうか。
成功する会社を築き上げるには、いくつかの方法があります。こういった方法は学ぶことができると思います。
ただ、教育とは違うかもしれません。教育という言葉からは、大学などの教育機関を思い浮かべると思いますが、大学は起業家を育てるために、必ずしもいい場所ではありません。大学というのはすでに確立された知識、系統だった知識を教えるのには適していますが、まだ存在しない新しいことを教えることはできません。
しかし教育という言葉をもっと幅広い意味で捉えた場合に、シリコンバレーには学ぶべきものがたくさんあります。
例えば、これまでに成功してきた起業家の人たちからアドバイスを受けることができます。または、多くの投資経験をもった投資家から話を聞くことができます。こうしたやりとりのことも教育だと捉えれば、こうした教育には大きな意味があると思います。
――「ゼロ・トゥ・ワン」では、競争は負け犬がやることで独占するべき、という下りが印象的です。ただ、通常は独占状態は悪とされ、独禁当局との衝突を生みますよね。
私が本で示したのは、企業の内部の人間としての視点です。企業の創立者、初期の投資家という視点をこの本の中では描いているわけです。そういった内部の人間から見ると、当然、独占を目指すことになります。例えばグーグルのように。レストランのような状況になってしまうと経営は非常に難しくなる。企業内からの考えでは当然のこととして独占を目指すことになります。
郵便局のようなものが悪い独占
――当然、企業と政府が対立する局面もあります。
社会、政府という外部の視点から独占を見た時に、独占には良い独占と悪い独占があると思います。悪い独占というのは国民にいわば税金を徴収するようなものです。あるいは料金を徴収するようなもので、非常に固定化された、静的なものであると思います。その典型例が郵便局だと思います。だからこそ独占禁止法が存在するわけです。
一方で、良い独占というのは例えば知的所有権や著作権や特許などでもわかるように、政府は新しい発明を守ろうとしています。それは社会にとっては、どれだけ動的に作用するか、ということです。静的にするか、動的にするか、の違いは重要です。これは社会に突き付けられた、問いかけだと思います。
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