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滋賀・呼吸器事件「冤罪」暴いた記者が問う"歪み" 7回の有罪判決も調査報道が明らかにした真実

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湖東記念病院での事件は、入院男性の死亡が見つかった際、第一発見者の看護師が「呼吸器のチューブが外れていた」と警察に供述したことが発端だった。警察は自然死の疑いを考慮せず、看護師の供述が虚偽だったことがわかった後も「事件化」に向けて突き進んだ。ところが公判においても、呼吸器の「管の外れ」によるもの、とされた司法解剖鑑定書が検証された形跡がない。

「検察官や裁判官が鑑定書をちゃんと読めば、窒息死の原因として明記された『管の外れ』は他の証拠と矛盾に満ちたものであることは容易に発見できたはず。ところがそうはならなかった。原審から計7回の裁判で裁判官席に座った24人もの裁判官が、ただ漫然と見逃し続けました。

裁判官たちは、刑事が作文した『殺した』という自白調書だけを信じ、美香さんがいくら無実を訴えても、まともに証拠を読もうとしなかったわけです。検察の主張に従ってさえいればいいという日本の刑事裁判の悪しき風習と、自白偏重主義にあぐらをかく裁判官たちの嘆かわしい実態を目の当たりにしました」

小出医師による鑑定で軽度知的障害などが判明

美香さんについては、2017年4月に刑務所で小出医師による鑑定が行われ、軽度知的障害とADHD(注意欠如多動症)、愛着障害があることが判明した。そして同年12月には再審開始が決定され、2020年3月に大津地裁で再審による無罪判決が出た。

「ニュースを問う」という大型特集でのキャンペーンが始まったのは、鑑定結果が出た後の2017年5月。それ以降、この欄での連載は40回を数え、矛盾に満ちた捜査とそれを見過ごしてきた検察・裁判所に焦点を当てた報道を続けた。

秦氏の著書「冤罪をほどく “供述弱者”とは誰か」(風媒社)。2022年の講談社本田靖春ノンフィクション賞を受賞した(写真:フロントラインプレス)

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【日本の社会と報道に潜む重要な問題】

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