「母親に彼のことを話すと、『こんなに条件のいい男性は、もう2度と現れないんじゃない? 逃しちゃダメよ』って。その言葉もあって、出会ってから、半年くらいで結婚を決めてしまいました」
プロポーズを受け、両家のあいさつを済ませた2人は、結婚への準備を進めていった。式場を予約したり、新居を探したりしたのだが、一緒に過ごす時間が長くなるにつれ、違和感を覚えるようになっていった。
「最初は、グイグイと引っ張っていってくれるところが、男っぽくていいなと思っていたんです。ただ、付き合い出した当初から束縛が厳しくて、『何時に会社から帰ってきたか』とか、『休みの日に何をしていたか』とか、細かく聞いてくるんです。私はそれを最初、愛だと勘違いしていました」
手のひらの上で転がしなさい
母にも彼の過干渉を相談した。するとこんなことを言った。
「あなたのことが心配なのよ。それに、男の人はみんな焼きもち焼きよ。100%理想通りの人はいないし、結婚は日々の生活だから、お金がない人よりある人としたほうが幸せ。よしおさんは高学歴、高収入だし、子どもが生まれたときに、そういうお父さんのほうが絶対にいいわよ。結婚したらあなたがうまく立ち回って、手のひらの上で転がしなさい」
結婚に全面的乗り気な母の援護射撃もあり、違和感や不安はあったものの、結婚式、入籍を経て、新婚生活が始まった。
そして、一緒の時間を重ねていくうちに、もう1つ生まれた違和感があった。ちょっとしたことでキレるのだ。
「付き合っていたときからそうだったんです。私が彼の気に触るようなことをすると、チッと舌打ちしたり、私が話しかけても無視したりするんですね」
一緒に暮らすようになって、1週間が経ったときのことだ。
「仕事を終えて帰ろうとしたら、結婚式にも参列してくれた大学時代の親友と街で偶然会ったんです。結婚式の日はゆっくり話もできなかったし、『お茶しようか』ということになったんだけど、『時間も時間だから、夕食を食べようか』となって。そのことを元夫にLINEしました。すぐに既読になったので、返信はなかったけど、私の状況はわかってくれたものだと思っていました」
そして、友達との食事を終えて22時頃に帰宅した。鍵を開けて玄関を入ると、そこには鬼の形相の元夫が仁王立ちしていた。
「本当に女友達だったのか? 偶然会うなんておかしいだろう。自分だけ外でうまいもの食って、大したご身分だな。俺のメシはどうするんだ」
相手が男性ではなかったのかと、疑っている様子だった。その発言にカチンときたありさは、返事もせずに元夫の横を通り過ぎようとした。するといきなり腕をつかまれ、「なんだ、その態度は!」と怒鳴りつけられた。
「痛いっ。何するの!」
つかまれた腕を振りほどいてリビングに行くと、後から追ってきた元夫に向かって語気を荒らげて言った。
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