「食品値上げ」話題ピークから株価はどう動くのか 過去のGoogle検索データの推移をもとに分析

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このように食品値上げが話題になった時期を振り返ると、その背景は原材料、円安、物流コスト高などが多くの理由ですが、それぞれ状況は異なります。しかし、株価の動きと重ねて見ると、過去3回ともいずれも話題のピークから、1年程度先に株価が安値をつけていることは気がかりです(図1中の3つの矢印)。

そこでさらに、景気の変動と合わせて見るために図1では、内閣府が発表する景気動向指数も取り上げました。すると、景気動向指数が天井から落ち込むちょうど手前付近のタイミングで、食品値上げの話題がピークとなっていることがわかります。景気が良くなると、原材料費や人件費が上がります。このようなコスト高に対応して値上げに抵抗があった食品メーカーが、ようやく値上げに踏み切る付近では、すでに景気は落ち込み始めているからかもしれません。

とは言うものの、食品メーカーにすれば、値上げができることは、利益率(利益÷売上高)改善につながる点で業績へのポジティブ面は評価できます。そこで図2では東証33業種別株価指数の食料品株価指数と食品値上げの検索数の推移を並べてみました。ここでは共に前年同月との比較を示しています。

食料品株価指数と「食品値上げ」検索数からわかること

その結果、検索数の前年からの変化は、食品株の前年比の変化率と、ある程度連動していることがわかりました。食品株の前年比の変化率は、平たく言えば、前年同月からの収益率となります。ですから、検索数が前年と比べて増えると、前年と比べて食品株が年間でプラスの収益率となるのです。

図2の2つのグラフは完全に連動しているとは言いがたいところもあります。これは検索数と食品株の変動に時間の差(ラグ)のあることも原因の1つです。統計的な手法を使って、食品値上げの検索数が前年と比べて増えているにもかかわらず、食品株の収益率がマイナスに落ち込むラグを調べると、“6カ月”となりました。

図2の矢印に見られるように、7月末現在で食品値上げの検索数の前年比はピークから3カ月下がっています。しかし過去の傾向からは、あと3カ月程度、食品株は期待できる傾向と見られます。

吉野 貴晶 ニッセイアセットマネジメント 投資工学開発センター長

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よしの たかあき / Takaaki Yoshino

金融情報誌「日経ヴェリタス」アナリストランキングのクオンツ部門で、記録的となる16年連続で1位を獲得した後、ニッセイアセットマネジメントに入社。大学共同利用機関法人 統計数理研究所のリスク解析戦略研究センターで客員教授を兼任。青山学院大学大学院国際マネジメント研究科(MBAコース)で経営戦略、企業評価とポートフォリオマネジメントの授業の教鞭も取る。代表的な著書に『No.1アナリストがプロに教えている株の講義』(東洋経済新報社、2017年) 。

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