「中国ミサイル、日本のEEZ落下」が示す日本の盲点 思い描いている価値観とかなりギャップがある
国連憲章では、武力による威嚇やその行使を慎むことを加盟国に求めている。こうした国際約束を承知のうえで、中国国防部の報道官や前述の孟少将は、今回の実弾射撃を含んだ軍事演習の目的が台湾独立派に対する警告であり、アメリカなど外部勢力への威嚇であることを明言している。
近年、FDO(flexible deterrent options:柔軟抑止選択肢)といった危機発生時に部隊の展開などを通じて相手側に意図と決意を伝えて抑止を図ることが行われている。今回の中国の軍事演習に備えたアメリカ空母「ロナルド・レーガン」の周辺海域への派遣もその1つと言える。こうしたFDOは、一方で不測の衝突や第三者への影響を考慮して行われるものである。
孟少将の解説によれば、ミサイルが弾着した訓練海域の1つが、沖縄に近いことを理由に選定されたことを挙げている。つまり、今回の弾道ミサイル発射は、これまで中国が行ってきた海軍や海警の艦艇による領海侵犯や日本周辺海空域における軍艦や軍用機の偵察航行とは異なるステージ、実弾を用いた日米への威嚇、警告であったということだ。
はからずも今回の軍事演習によって「台湾有事は日本有事」であることを中国自身が日本社会に明らかにしたようにも見える。
中国は台湾の一般市民の生命や財産を考慮していない
ギャップの2つ目は、中国は台湾を自国の一部であり、台湾市民も国民であると主張してきたにもかかわらず、中国は台湾の一般市民の生命や財産を軽視している。否、考慮していないということだ。
中国は弾道ミサイルの一部を、台北などの人口密集地域の上空を越えて台湾の東側にある太平洋上に弾着させた。今回のミサイルは洋上の敵艦艇を攻撃するためのものではなく、都市や基地など地上の施設を破壊するためのミサイルとみられている。
演習は実際の戦闘と異なり一定程度の安全係数、とくに市民への被害は考慮されるべきはずであるのだが、中国国民の一部であるとする台湾市民の犠牲よりも威嚇を優先した今回のミサイルの飛翔経路は、中国が考える国民の生命・財産の重さを如実に表している。
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