1500万部のサッカー漫画に見る「弱者の戦い方」 元日本代表・中村憲剛さんが語る「アオアシ」

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「考えてリスクを冒す」ということ

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「リスクを冒す」と口で言うのは簡単ですが、みんな守りたいものはありますから、リスクを管理したくなるものです。ただリスク管理をすると、相手にとって怖さが少しなくなります。やはりリスクを冒した時のほうが相手にとっては怖い。もちろん、闇雲になんでもいくのは無謀なだけですが。

だからイビチャ・オシムさんは、「考えて走れ」「考えてリスクを冒せ」と言っていました。リスクを冒していいタイミング、シチュエーションをチームで理解していれば、それはリスクではなくなるからです。

街クラブでもそれができるというのを描いているのは興味深い展開でした。最終的な結果はさておき、この後彼らがどう成長していくのかとても興味があります。

©小林有吾/小学館

最後に武蔵野FWの金田についても触れておきますが、この試合で彼はいろんなことを気づいたと思います。エスペリオンのセレクションに落ちたことの反骨心を原動力に、彼は武蔵野で牙を研ぎました。そしてチームを勝たせるストライカーにまでなりました。

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点を取る能力というのは才能だと僕は思っています。でも、サッカーはそれだけじゃありません。チームが苦しい時に、点を取るだけじゃない仕事をどれだけできるか。そのうえであいつにボールを送りたいと思わせるようなチームメートとの信頼関係もそうです。

そういう意味では、街クラブからエスペリオンに来て力を出し切れず悩んできた橘のような点の取り方と、街クラブで開花した金田のような点の取り方、そこの対比も面白かったですね。

中村 憲剛 元プロサッカー選手

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なかむら けんご / Kengo Nakamura

1980年10月、東京都生まれ。2003年の加入以降、現役生活18年のすべてを川崎フロンターレで過ごした。Jリーグベストイレブン8回選出、2016年には史上最年長にてJリーグMVPを受賞。日本代表としては2010FIFAワールドカップに出場、国際Aマッチ68試合出場、6得点。2020年シーズン限りにて現役を引退。現在は育成年代への指導や解説活動等を通じて、サッカー界の発展に精力を注ぐ。

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