アメリカで600万人が「地球平面説」を信じる理由 「陰謀物語」という疑似宗教が持つ力と危険性

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無邪気な「ナラティブ礼賛」ブームの裏側で(写真:ktsimage/PIXTA)
陰謀論、フェイク・ニュースなど、SNSのような新しいテクノロジーが「ストーリー」を拡散させ、事実と作り話を区別することが困難になりつつある現代。このたび、上梓された『ストーリーが世界を滅ぼす──物語があなたの脳を操作する』で、著者のジョナサン・ゴットシャル氏は、人間にとって大切な財産である「ストーリー」が最大の脅威でもあるのはなぜなのか、を明らかにしている。本稿では同書から一部を抜粋・編集してお届けする。

私たちの心の機能を奪う「陰謀物語」

私たちは陰謀論的な思考のパンデミック状況を生きている。

『ストーリーが世界を滅ぼす──物語があなたの脳を操作する』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

アメリカ人の半数近くがエリア51(宇宙人とUFOを収容しているとされる軍事施設)をめぐる陰謀論を信じているか、うそと断定はできないと考えている。

アメリカ人の半数が何がしかの形の911陰謀論とケネディ暗殺陰謀論を信じている。3分の1弱が新世界秩序(世界のトップエリートたちが世界を統一し管理社会を作るという説)やオバマの出生をめぐる陰謀論(オバマは実はアメリカ生まれではなく大統領になる資格がないとする説)を信じている。

共和党支持者の3分の1が、エリートたちが牛耳るディープステイト(闇の政府)が存在するというQアノンの説は「ほぼ正しい」と信じている。

そしてパンデミックといえば、私が本書の最終稿に手を入れている現在、COVID-19陰謀論を支持するアメリカ人が増えている。40%が死亡率は「意図的に大幅に誇張されていた」と考え、27%がCOVID-19のワクチンは私たちの体に追跡用のチップを埋め込むために使われるのではないかと懸念している。

陰謀論についてまず理解しておくべき最も重要なポイントは、この言葉自体が誤った名称であることだ。「論」という言葉には基本的に、虚偽であると実証できるこれらのナラティブが、理性の過ちゆえに信じられているという含みがある。

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