日本は「ハイブリッド戦争」の脅威に備えているか ウクライナ侵攻に見たサイバー、情報などの領域横断

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アメリカ陸軍参謀次長(サイバー担当)のジョン・モリソン中将は、6月9日のオンライン記者会見で「陸軍は、サイバー・電磁波活動と能力を急拡大させており、サイバー部隊は今後も増やしていく。サイバー戦と電子戦を融合させ、陸軍の戦術編成全体で検討する」と述べた。

このモリソン中将の言葉を裏付けるのが、アメリカ陸軍のサイバー部隊の数を現在の3000人強から2030年までに倍の6000人以上に増やすとの6月10日の発表だ。ちなみに日本において今年3月、陸海空3自衛隊のサイバー関連部隊を再編してできたサイバー防衛隊の規模は、540人であった。サイバー防衛隊は、防衛省・自衛隊の情報通信ネットワークの監視およびサイバー攻撃への対処を24時間態勢で実施している。

しかも、アメリカ陸軍に陸軍予備役と陸軍州兵も加えると、サイバー部隊の規模を現在の5000人以上から、2030年までに7000人以上にまで拡大する予定だ。また、アメリカ陸軍州兵の電子戦部隊も増やすという。

アメリカ軍がサイバー戦と電子戦に対応できる人材をこれだけ急激に増やそうとしているのは、近年、アメリカの官民双方におけるサイバー攻撃の大規模な被害が続いているのに加え、ウクライナ情勢や台湾情勢への危機感があるからではないか。アメリカ陸軍がミサイルや電子、サイバー等の能力を一体的に扱う作戦部隊のアジアへの配備を検討中、との7月27日付の日本経済新聞の報道もある。

スターリンクが示した宇宙、サイバー、電磁波の課題

ウクライナ国家特殊通信・情報保護局によると、ロシアのウクライナ軍事侵攻以降、6月中旬時点でウクライナ国内の通信インフラの約20%が破壊または損傷されてしまった。ウクライナがロシアからの情報戦に対抗し、国内外にウクライナ発の情報を届けるうえで、回復力(レジリエンシー)の高い通信サービスを確保するのは非常に重要である。

だからこそ、スペースXのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)が2月末にスターリンク通信衛星サービスをウクライナに提供し、しかもサイバー攻撃やジャミング攻撃に耐えてサービス提供を続けられているのは、大きな意味を持つ。

アメリカ政府は、電子戦に対するスターリンクの素早い対応能力に早速注目した。4月20日の軍事系オンライン会議に登壇したアメリカ国防総省国防長官府のデイブ・トレンパー電子戦部長は、ロシアからのスターリンクへのジャミングについて報じられた翌日に、スペースXが早くも対応、ジャミングを「回避した様は驚異的」と絶賛した。

しかし、アメリカ政府がそうした修正を行おうとすれば、課題分析、修正方法の決定、業者との契約締結などに相当な時間を要してしまうと反省し、アメリカ政府にもスターリンクのような俊敏な対応が必要だと指摘している。

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