日本は「ハイブリッド戦争」の脅威に備えているか ウクライナ侵攻に見たサイバー、情報などの領域横断

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日本でも、内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)が中心となって、中央省庁と重要インフラ企業関係者が重要インフラへのサイバー攻撃を想定した「分野横断的演習」を2006年度以降、毎年開催しており、東京五輪など、最新の情勢対応の仕方を確認してきた。2018年12月のサイバー演習では、ツイッターによる偽情報拡散への対応もシナリオに盛り込まれている。2021年12月の演習には、官民から4800人ほどが参加した。

防衛省・自衛隊が今までに分野横断的演習に参加したどうかについては、過去の資料を見る限り不明である。ただし、防衛省については、他省庁と連携してサイバー演習を行い、防御のノウハウを重要インフラ企業に共有することなど検討しているという。

また、防衛省・自衛隊は、NATOサイバー防衛協力センター(在エストニア・タリン)が毎年春に主催している国際サイバー演習「ロックド・シールズ」に内閣サイバーセキュリティセンターなどの他省庁や重要インフラ企業と共に昨年と今年参加している。

「ロックド・シールズ」には、世界から毎年数十カ国が2カ国ずつチームを組んで参加し、多様な重要インフラへの数千回ものサイバー攻撃からの防御や偽情報への対応、法的・外交的・軍事的対処など総合力を競い合う。防衛省・自衛隊は、昨年はアメリカのインド太平洋軍、今年はイギリス国防省およびイギリス軍と組んでおり、国境を跨いで広がりかねないサイバー攻撃被害を国際的な官民連携で最小化したいとの強い意欲がうかがえる。

アメリカ陸軍のサイバー部隊を2030年までに倍増

アメリカ陸軍は、今年2月のロシアによるウクライナ軍事侵攻の前からサイバーセキュリティ能力の向上に力を入れてきた。サイバー空間を通じて妨害や破壊、影響工作を行い、アメリカ陸軍の機動作戦を支援するため、アメリカ陸軍サイバー軍は、2019年5月、第780軍事情報旅団の下に第915サイバー戦大隊をパイロット版として設立した。

2021年12月、第915サイバー戦大隊は、州知事邸宅をテロリストが乗っ取ったとのシナリオで、初めて戦術的なサイバー訓練を実施している。邸宅内のIoT機器をハッキングして情報収集し、サイバー効果を使ってテロリスト役を追い出せるか試した。

アメリカ陸軍は、今年、2023年度のサイバー・IT予算として166億ドル(約2兆2119億円)を要求している。そのうち約20億ドル(約2665億円)が、攻撃作戦と防御作戦、サイバーセキュリティの研究開発費用である。

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