本物の戦略立案者は自社でなく世の中・新を見る 「経営戦略の実戦」シリーズ464事例から考える
新規事業で問うべきは、世の中が待ち焦がれていた事業なのか否かである。これを便宜上「世の中・新」と呼ぶことにする。
このシリーズでは「世の中から見て」という視点を貫くことにより、偏屈な独り善がりを排除する。そうするだけで戦略に関する議論は格段に充実の度合を増すこと請け合いである。ぜひ念頭に置いていただきたい。
特徴5 実践から実戦へ 本物の戦略を描くために
これまでの戦略論には、イゴール・アンゾフやチャールズ・ホファーとダン・シェンデルのように、戦略の実践を計画の策定と実行の2段階に分けて説くものが多かった。
それらは経営企画の仕事の進め方に寄り添うあまり、戦略を計画と履き違えている。社員やアナリストに向けて説明する計画と、社外で起こる変化に向けて打つ戦略は、基本的に別物である。
計画策定段階では想定していなかった変化が起きたあと、新たな現実に適応するところに戦略の使命があり、戦略は計画から離れてこそ本物になる。
このシリーズは実戦に向けて実戦に材を取る。具体的には、寝ても覚めても自社の未来を考える経営者が善かれと考えて打った手の功罪を、結果が確定するまで待って検証する作業を黙々と繰り返し、そこから立ち上がってくるパターンを各巻で有用な教訓として整理する。
経営幹部候補生を教育する価値があるのは、戦略の主体が企画部門でなく、経営者であるからにほかならない。戦略を意識して語る経営者は多くないが、彼らの言動が揺らがないとしたら、そこには半固定的な作業仮説のようなものがあると考えたほうがよい。そういう暗黙の仮説こそ、戦略の正体なのである。
なお、類書はサイエンスの伝統にのっとって理論家以外の人名を持ち出すことを拒んできたが、このシリーズでは可能な限り当事者個人に光を当てていく。経営幹部候補生専用の教科書を標榜する以上、誰が経営しても結果は変わらないと決めつけるのでは筋が通らないからである。
企業内大学という器はできた。そこから先は魂が入るかどうかの勝負である。このシリーズが新たなフェーズを呼び込む一助となればと願う次第である。
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