本物の戦略立案者は自社でなく世の中・新を見る 「経営戦略の実戦」シリーズ464事例から考える

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特徴3 戦略の5W1Hをはっきりさせる

これまでの戦略論には、好業績につながると考えられる「状態」を記述するものが多かった。差異化ができている状態、経営資源の蓄積が厚い状態、部門部署間のベクトルが合った状態、などなどである。

その一方で、望ましい「状態」を生み出すアクションには踏み込んでいないため、経営戦略の傍観者は納得しても、当事者は困惑するだけであった。

経営教育の現場で呵責の念が積もる最大の原因は、このギャップにある。わかりやすく例えるなら、特定の場所に橋を架けようという人に世界で最も優れた橋の姿を解説するようなもので、かゆいところに手が届かない。

自分はどういう順番で何に手を着けるべきなのかという問いに答えを出さなければならない幹部候補生を前にして、それでは辛いのも当然である。

このシリーズでは、当事者のアクションを終着点とする。言い換えるなら、戦略の5W1Hをうやむやにしない。

幸い、2010年あたりから図書館システムのIT化が飛躍的に深化して、アカデミックなケース・スタディーの精度を上げると同時に、ケースの数を積み重ねることができるようになってきた。それを生かしてアクションの是非を解き明かし、経営幹部候補生を触発するに足る教育コンテンツを築いていく。

特徴4  自社・新から世の中・新へ

これまでの経営戦略論には自社への関心を奨励するものが多かった。われわれの強みは何なのか、われわれの弱みは何処にあるのか、われわれの技術や販路と打ち手の親和性は高いのか。こうして自社を見つめれば見つめるほど、皮肉なことに戦略性は薄れていく。なぜなら、戦略の成否を決めるのは顧客の側だからである。

なかでも新規事業の議論では、視点の設定が決定的に重要になる。従来は、自社が現状では手がけていない事業という意味で「新規」と言うことが多かった。それゆえ「自社・新」であっても世の中から見れば何の驚きもない事業に資源投入することが平然と起きている。

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