世界の車載電池の生産規模が、まもなく「テラワット時(TWh)」の時代に突入しそうだ。
中国政府直属の最高研究機関である中国科学院のメンバー(院士)で清華大学教授の欧陽明高氏は、7月21日に開催された車載電池業界のフォーラムで、全世界の車載電池の出荷量が2023年に1TWhを突破するとの予測を示した。さらに、2025年には中国の出荷量だけで1TWhを上回り、総生産額は1兆元(約20兆4132億円)を超えると予想した。
ワット時は電力量を表す単位で、1TWhは1000GWh(ギガワット時)に相当する。車載電池はEV(電気自動車)に代表される「新エネルギー車」の基幹部品の1つであり、EVの普及加速とともに需要が急増している。
(訳注:新エネルギー車は中国独自の定義で、EV、燃料電池車[FCV]、プラグインハイブリッド車[PHV]の3種類を指す。通常のハイブリッド車[HV]は含まれない)
中国汽車工業協会のデータによれば、2022年1~6月に中国国内で販売された新エネルギー車は260万台に達し、前年同期の2.2倍に増加した。また、車載電池の業界団体のデータによれば、1~6月に生産された新エネルギー車に装着された車載電池は前年同期の2.1倍の110.1GWhに上った。
全固体電池の量産化は2035年前後
新エネルギー車の普及は、業界関係者の予想を超えるペースで進んでいる。中国政府は2020年11月、2025年の国内の新車販売台数に占める新エネルギー車の比率を20%前後に高める目標を打ち出した。だが、2022年1~6月の新エネルギー車の販売比率はすでに21.6%に達しており、国家目標を3年前倒しでクリアした格好だ。
中国政府は世界各国に先んじて新エネルギー車の普及を後押しすることで、(中国の電池メーカーによる)車載電池の急速な技術革新を支える基盤を作った。その結果、中国は新エネルギー車の販売台数で全世界の約半分、車載電池の生産量で同約7割を占めるまでになっている。
「2013年以前の中国では、三元系リチウムイオン電池の量産技術が確立しておらず、EVの航続距離を延ばすのが難しかった。しかし(技術革新を経て)2015年から三元系電池の量産が始まったことで、その後の新エネルギー車の爆発的な市場拡大につながった」
冒頭の欧陽氏は、中国の電池開発の足跡をそう振り返り、今後の見通しを次のように語った。
「車載電池用の電池セルは、将来は全固体電池に移行していく。正極と負極に新材料を用いた全固体電池は、(電解質に液体を用いる既存の電池より)エネルギー密度をさらに高めることが可能で、(膨張や発火などの)安全性の問題も抜本的に解決できる。その量産化は2035年前後になりそうだ」
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は7月22日
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