30年ぶり「マツダがレース」に帰ってきた深い訳 次世代を見据えたMAZDA SPIRIT RACINGの活動

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2020年に入ってからコロナ禍となり、2022年に入ってからはロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー供給を含めた経済不安が日本を襲った。

また、政治主導による欧州グリーンディール政策の影響からグローバルで一気にEV(電気自動車)シフトが叫ばれ、日本では国が「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を発表。

これに対して4輪メーカー、バス・トラックメーカー、2輪車メーカーでつくる業界団体の日本自動車工業会は、「カーボンニュートラルに向けた山を登る道はさまざまある」という表現を使い、EVのみならず既存の内燃機関が活用できるカーボンニュートラル燃料や次世代バイオディーゼル燃料の可能性を模索する動きを始めた。

スーパー耐久ST-Qクラスは、その研究開発を世の中に対して“見せる場”となったのである。

トヨタは水素エンジンの「カローラスポーツ」で参戦している(写真:トヨタ自動車)

「極秘裏に進めるように」と上司から

マツダ社内では、2022年からMAZDA SPIRIT RACINGの活動が始まることを知っていた人もいたようだが、そこにカーボンニュートラルが大きく絡んでいることを予想した人はほとんどいなかった。

実際、ディーゼルエンジン開発担当者は「2021年10月下旬に突然、バイオ燃料によるレース参戦を極秘裏に進めるようにと上司から話がきた」という。目の前のターゲットは、それから3週間後に岡山国際サーキットで決勝が行われる、スーパー耐久2021シリーズ最終戦への参戦だ。

そのため、2010年代からマツダのディーゼル車でスーパー耐久に参戦しているプライベートチーム「Team NOPRO」から車両を借りて、海外から輸入した化石燃料由来の軽油ではなく、日本国内で原料から精製までを一貫して行うユーグレナ社の次世代バイオディーゼル燃料を使用することに。

ユーグレナ社の次世代バイオディーゼル燃料「サステオ」(写真:マツダ)

まずは、この燃料を使った場合のエンジン内の燃焼状態を確認し、燃料制御プログラムの最適化を進めた。納期が短い中でトライ&エラーを繰り返して結果を出す、いわゆる“アジャイルな開発”がいきなり始まったわけだ。そして、スーパー耐久2021最終戦の参戦になんとこぎつけ、完走を果たす。

2022年はTeam NOPROからマツダとして買い上げたMAZDA2 Bio conceptに加えて、MAZDA SPIRIT RACINGの本質であるロードスターでのST-5クラス参戦もあわせて行うという、大所帯になることが決まっている。

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