30年ぶり「マツダがレース」に帰ってきた深い訳 次世代を見据えたMAZDA SPIRIT RACINGの活動

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24時間レースという大舞台を経験したことで、皆がモータースポーツに関わる一員として、また企業人として、そして一人の人間として“ひとまわり大きくなった”ように見える。

レース序盤に全コースで徐行となるフルコースコーションとなったが、チームは臨機応変にレース戦略を変更し、見事に完走。チーム代表であり、マツダの魂動デザインを支えてきた現シニアフェロー(ブランドデザイン)の前田育男氏は、ホッとした表情を見せた。

3時間のレースを完走した「MAZDA2 Bio concept」(写真:マツダ)

未来のマツダを考える場所に

ここで改めて、“MAZDA SPIRIT RACINGとは何か”を前田氏の説明をもとに紹介しておく。

チーム発足の直接的なはじまりは、2019年だ。それまで、さまざまなモータースポーツにプライべートで参戦していた前田氏が「マツダとしてスーパー耐久に出場するチームを作ろう」と発想。まずは、前田氏自身がスーパー耐久にプライベートチームでドライバーとして参加し、チーム運営のノウハウを現場で学んだ。

スーパー耐久は全国を巡る本格的な通年のシリーズ戦だが、参加者の多くはさまざまな経歴や職業を持つ、プロフェッショナルではない人たちだ。プロフェッショナルドライバーが助っ人として参戦しているチームもあるが、全体から見れば少数派である。

チーム運営の規模や費用にも差があり、大型トランスポーターや休憩施設を持ち、億単位のお金をかけるチームもあれば、チーム関係の“持ちより”で成り立っているチームもある。しかし、いずれの場合も、“モータースポーツを楽しむ”という純粋な気持ちに満ちている点は変わらない。

MAZDA SPIRIT RACINGのチームメンバー(写真:マツダ)

そんな中で、学生時代からプライベートでモータースポーツに参加し続けてきた前田氏は、「こうした場にマツダも企業として参戦し、マツダ車を愛するユーザー、またマツダや販売店の社員とともに未来のマツダを一緒に考える場が必要だ」と考え、行動に移した。これが、MAZDA SPIRIT RACINGの本来の目的だ。

そして、前田氏が中心となり、2022年からの実戦参加を想定して、チームウェアなどのデザインを含めたさまざまな準備を水面下で進めたのである。ところが、事態は急変する。

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