「日銀の金融緩和は間違い、手仕舞いすべき」 エコノミスト・河野龍太郎氏に聞く
原油安で2015年の景気は押し上げられる
原油価格の下落が日本経済に及ぼす影響をみてみる。消費税の影響を除けば、消費者物価上昇率は今年2月にも、ゼロないしはマイナスになる可能性があり、その後も夏場まではゼロ前後の推移が続くと予想している。
2014年10~12月の実質GDPは3四半期ぶりにプラス成長に転じ、高めの成長となって、7~9月にマイナス0.9%まで悪化していた需給ギャップは再びゼロ近傍に改善するとみている。消費や輸出が持ち直してきたためだ。
原油価格が現状の50ドル台で推移すると、名目所得には7.4兆円、名目GDP比で1.5%ポイントの減税に相当する効果が発生する。ただし、重要なことは、今の日本は完全雇用の状態に入っているので、需要が増えても国内生産ですべて賄われるわけではない。したがって、輸入の増加が起きて、実質GDPの押し上げ効果は0.6~0.7%ポイントと見ている。
2015年度の実質GDPは1.3~1.4%と予想しており、私は日本の潜在成長率は0.3%と考えているので、4~5倍に匹敵する。原油安のおかげで2015年は景気がかなり良くなる。結果的には、2015年10月の消費税率10%への引き上げを予定通りにやっても十分こなせたといえる。
間違った理解に基づく間違った政策
アベノミクスと日本銀行・黒田東彦総裁による量的・質的金融緩和(QQE)は間違った政策であることがハッキリと見えてきた。
足元の原油価格下落による景気回復のメカニズムは、アベノミクスが主張するデフレ脱却によるものではなく、むしろインフレ率の低下で起きている。甘利経済再生担当相が過度の円安や、早期の物価目標達成に否定的発言をしているのは、政府サイドも原油安の効果を円安が損なうことに気がついてきたからではないか。
そもそも、アベノミクスやQQEは、「2000年代に多くの人がデフレで貧しくなったから、デフレ脱却が必要だ」と考えてとられた政策だ。しかし、この認識は間違いだ。当時は、現在とまったく逆のメカニズムが起きていた。2002~08年初頭まで中国向けを中心に輸出ブームが起きていた。それなのに、多くの人が豊かさを実感できなかったのは、中国ブームによる原油価格の高騰によって、輸入物価の上昇が引き起こされ、輸入インフレが我々の実質購買力を押し下げていた。
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