「日銀の金融緩和は間違い、手仕舞いすべき」 エコノミスト・河野龍太郎氏に聞く

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需給のスラックなく、引き締めに転じるべき

安倍政権誕生後、2013年7~9月まで高めの成長が継続したが、10~12月にマイナス成長になってしまったのは、需要不足が解消されていたからだ。安倍政権のスタート段階で需要不足は2%あったが、2012年度補正予算で名目GDPの2%強に相当する10.3兆円の追加財政をやったので、これが解消されていた。そのため、消費増税を行う前から、成長は頭打ちになっていた。需要不足が解消されたら、潜在成長を上回る高い成長の継続は難しい。

経済にとって、円安がよいのか、円高がよいのかは、需給ギャップから考えるべきだ。大きなスラック(需給の緩み)があれば、円安の方がいい。円安にすることで、海外で日本製品が割安になれば輸出が増えて、生産が増える。生産が増えれば、企業業績が改善し、雇用が増える。雇用所得の増加により、円安による輸入物価の上昇をこなせる。

しかし、2013年10~12月にはスラックが解消され、だから、円安になっても、輸出が増えてこなかった。昨年の春頃には日銀の黒田総裁自身が、「日本はほぼ完全雇用に達している」としていた。これはスラックがなくなったということだから、金融政策としてはむしろ引き締めに転じるべきだった。

想定外の景気低迷を招いた真犯人は日銀

仮に金融緩和の縮小に向けて舵が切る動きがあれば、金融市場では円高が進み、消費増税による物価上昇の影響をオフセットすることもできていたかもしれない。2015年10月の消費税率再引き上げの先送りもしなくてもよかっただろう。ところが、反対に円安を促す追加緩和を行い、消費増税で損なわれていた実質購買力を一段と減少させた。2014年の想定を超える景気低迷を招いた真犯人は円安であり、それを引き越した日銀のQQEだ。

アベノミクスの財政政策についても同じことが言える。2012年度の補正予算の効果により、2013年後半にはもうスラックはなくなっていたのだから、2013年度の補正予算は不要だった。公共投資は人手が足りなくて執行ができない状態であり、むしろ、民間の小売・流通業界が出店できないといったクラウディングアウト(民間需要の締め出し)を招いただけだった。つまり、アベノミクスの財政政策ももはや効果はなく、悪影響の方が出ている。当然、2014年度の補正予算も不適切と言える。

大崎 明子 東洋経済 編集委員

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おおさき あきこ / Akiko Osaki

早稲田大学政治経済学部卒。1985年東洋経済新報社入社。機械、精密機器業界などを担当後、関西支社でバブルのピークと崩壊に遇い不動産市場を取材。その後、『週刊東洋経済』編集部、『オール投資』編集部、証券・保険・銀行業界の担当を経て『金融ビジネス』編集長。一橋大学大学院国際企業戦略研究科(経営法務)修士。現在は、金融市場全般と地方銀行をウォッチする一方、マクロ経済を担当。

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