ヤマダ、創業者が語った「シェア奪還」戦略の全貌 再びピーク時の売上高2兆円へ「反撃ののろし」

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ヤマダデンキが社運を託す大型新業態の「ライフセレクト」。暮らしまるごと戦略で、家電製品のみならず、家具・インテリア、生活雑貨などの取り扱いも充実させた店舗だ(記者撮影)
家電量販の最大手、ヤマダデンキが再成長に向けて大きく動き出した。
創業者の山田昇・ヤマダホールディングス会長兼社長(79)が提唱する「暮らしまるごと」戦略の下、大型新業態「ライフセレクト」の展開を2022年度から本格化。同業態を武器に、2024年度のグループ売上高で再びピーク時の2兆円達成を目指す。
ライフセレクトは家電のみならず、家具や生活雑貨なども取り扱う総合型の店舗だ。一般的な郊外家電量販店の倍以上の売り場面積を誇り、目標とする年商は標準店舗で30億円以上。2021年度から主に既存店を増築・増床して業態転換を進め、わずか1年で店舗数は24(7月22日時点)まで増えた。
家電量販業界でシェア低下の続いたヤマダが上げた、反撃ののろし。東洋経済は山田会長へのロングインタビューを行い、その内容を2回にわたって掲載する。前編では、新業態の狙いと再成長への手ごたえを聞いた。
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市場縮小でヤマダがいちばん割を食った

――家電量販業界への強い追い風となったコロナ下の巣ごもり特需は、2021年度でほぼ一服しました。業界の今後をどうみていますか。

地上波デジタル放送移行やエコポイント制度で盛り上がった2010年度をピークとして、家電小売り業界の市場はシュリンクしている。かつては市場を牽引する新たな商品がつねにあったが、今はそうした目立った商品も見当たらない。

今回のコロナによる特需にしても一過性のもので、大きなうねりになるような新たな市場が生まれたわけじゃない。家電は生活必需品なので一定の買い替え需要は見込めるが、これから少子高齢化で人口も減っていく。業界の事業環境としてはより厳しくなっていくだろう。

やまだ・のぼる/1943年生まれ。1973年に群馬県前橋市で電気店を開業し、一代で家電小売りの最大手に。2020年10月、持ち株会社体制への移行に伴い、ホールディングス会長。2021年9月から社長を兼任(撮影:谷川真紀子)

この10年間を振り返ると、市場が縮小する中でいちばん割を食ったのが最大手の当社だった。グループで1000店もの圧倒的な店舗網を築き上げていたので、影響も大きかった。

2015年度にはヤマダだけで約60店舗(グループ全体で98店)の閉鎖を余儀なくされた。その後は改革を優先して、目立った新規出店をせずにきた。一方、ライバルはヤマダの繁盛店を狙って新店をぶつけてきたから、ずいぶんとシェアを奪われてしまった。

――実際、ヤマダの直近(2021年度)の売上高は1.6兆円で、かつての2兆円には遠く及びません。

この状況をいかに打破するか。それをずっと考え、いろんな試行錯誤を経て4年前に打ち出したのが、「暮らしまるごと」というコンセプトだ。既存の店舗を活用しつつ、家電製品から家具・インテリア、生活雑貨、おもちゃ、リフォームなど、衣食住の「住」に関わるほとんどのものを取り扱う独自の店作りをしよう、と。

――そうしたコンセプトで2018年から展開を始めたのが、家具や生活雑貨にも売り場を割いた「家電住まいる館」でした。しかし、短期間で100店にまで増やしたものの、期待した売り上げには届きませんでした。

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