日本の「野球用グローブ」が圧倒的な人気を呼ぶ訳 「名手モデル」「湯もみ型付け」など機能も多彩

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

「2019年3月、イチロー選手の引退試合となった『シアトル・マリナーズ対オークランド・アスレチックス戦』(東京ドーム)の前、当時アスレチックス所属だったジュリクソン・プロファー選手(現在はサンディエゴ・パドレス)に、当社の湯もみ型付けグローブを見せました。すごく感激して『明日の試合で使いたい』と言われ、実際に開幕戦で使ってくれました」(同)

江頭氏の開発した技術が各メーカーにも波及しているのだ。新品の段階から選手の使い勝手を意識した商品設計は、ある意味“日本的”といえよう。

「ベルガード」の湯もみ型付けグローブをはめたジュリクソン・プロファー選手(当時オークランド・アスレチックス、写真:ベルガードファクトリージャパン)

「野球競技人口の減少」と、どう向き合うか

国内の「スポーツ用品市場」は、ほかの業界と同じく、コロナ禍で痛手を受けた。各種のスポーツ大会やイベントが中止や規模縮小となり、この2年は販売機会を失ったのも大きい。

そのなかで「野球・ソフトボール用品市場」は、コロナ以前から続く「野球の競技人口減少」もあり、市場規模は約600~700億円(調査データによる)だ。こうした現状とどう向き合うか。2021年度の業績は対前年比120%と回復したゼットはこう語る。

「高校野球を中心とするユーザーはもとより、人口が一番多い草野球選手にも購入してもらえる商品の提供が課題です。当社のポリシーである品質第一は継承しつつ、デザイン性を重視するユーザーも満足できるような商品を開発していきます。

また、少子化だからこそ、野球競技の入り口に立つ小学生に親しんでもらえるよう、 小学生にとって捕球しやすく、手頃な価格の商品を開発し続けることも使命です」(鶴田氏)

興味深い話もいくつかある。例えば、コロナ禍で「昔の日本に戻った」現象だ。家族で過ごす時間も増え、住宅街の路地で「親子でキャッチボール」という光景も何度か目にした。

また、コレクションでグローブを集める人も目立ち、中には数十個所有する人もいる。男性に目立つ収集欲だが、「配偶者やパートナーには、なかなか理解されない」と聞く。こうした消費者向けに、“限定の記念グローブ”で訴求する手もあるだろう。

夏の甲子園大会も近づき、野球報道がより高まる時季を迎える。MLBやNPBのペナントレースも佳境に入ってきた。野球好きの人は「新しいグローブ」に手を伸ばすかもしれない。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。

 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事