「日本の経済安全保障」米国との連携が不可欠な訳 国家資本主義、技術競争と分断、相互依存の武器化

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またアメリカ・バイデン政権は「サプライチェーン⾒直し」について2021年に4分野(半導体・⼤容量電池・医薬品・レアアース)、その後6分野(防衛/公衆衛⽣・バイオ危機管理・情報通信技術(ICT)・エネルギー・運輸・農産物/⾷料⽣産)のレビューを実施した。これらの機微技術や重要産業について、アメリカ国内での生産や有力企業を抱える同盟国と連携して、中国依存からの脱却を目指す狙いがある。

経済安全保障法案と日米の協調

日本の経済安全保障の枠組みは、アメリカ政府がこれまで展開してきた経済安全保障政策と軌道を合わせて展開している。経済安全保障法案の中でも重視されている「特定重要技術」の開発支援について、政府は20の産業分野を絞り込む方針と報道されている。

この20分野は、ほぼアメリカのECRA14分野と符合する。この20分野に日本独自の特定を見いだすことができるのは「先端エネルギー・蓄エネルギー、化学・生物・放射性物質及び核」の項目である。日米両国が重要先端技術開発に関する政策協調を目指しながら、日本独自の優先順位を同時に示したと捉えることができるだろう。

またアメリカとのサプライチェーンと輸出管理をめぐる政策協調はとりわけ重要である。日米両国はもとより、日米豪印「クアッド」、日米韓3カ国、G7といったさまざまな枠組みでサプライチェーン管理を強化する必要がある。

他方で、アメリカの再輸出規制の域外適用には日本の産業界からの批判も根強い。アメリカが日本とともに新興技術の対象や懸念すべきエンドユーザーに対する情報交換を平素から行い、エンティティリストや軍民融合企業指定などの規制措置については、アメリカの一方的指定ではなく同盟国との協議を前提とすべきだ。そのために、日米経済分野の2+2閣僚協議の枠組みで、日米のハイレベル協議を実質的な政策協調の場として発展させることが重要であろう。

その一方で、日本は「戦略的不可欠性」の観点からも日本国内の民生技術の開発とその活用を抜本的に強化することが重要である。日本の産業界の保有する素材、要素技術、基礎研究、基盤技術を十分に掘り起こし、日本の防衛に資する新興技術を育成することが肝要だ。

(神保謙/慶應義塾大学総合政策学部教授、国際文化会館常務理事、APIプレジデント)

地経学ブリーフィング

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『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

2023年9月18日をもって、東洋経済オンラインにおける地経学ブリーフィングの連載は終了しました。これ以降の連載につきましては、10月3日以降、地経学研究所Webサイトに掲載されますので、そちらをご参照ください。
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