日テレ三冠王の裏に異色の「壊し屋」がいた 「目の前の仕事」を飛躍のきっかけにするには

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栗原 甚●日本テレビ 制作局 演出・プロデューサー。1993年日本テレビ入社、現職をまっとうしつつ、2013年6月からドラマ制作も兼任。

誰しも一度成功を体験してしまうと、なかなかそのやり方から離れられなくなるものだ。テレビの世界でも、番組が当たり、高視聴率を獲得すると、その実績を維持するための守りに入ってしまうことがあるという。そしてそんなときこそ、この男の出番なのだ。

「(制作チームの中で)ずっと担当番組をつくっている人は、なかなかやり方を変えられないじゃないですか。だから、かき回す人が欲しいと言われて、僕が行くことがある。で、だいたい今のやり方を壊しに入るわけだから、最初はあまりよく思われないのですが(笑)、別にいいやと思ってやる。そうすると、最初は『絶対に無理』と言われていたやり方がだんだん浸透してきて、最後はチームから『ありがとう』って言われて、また次の番組に行くのです」

1つの番組を何年も担当するプロデューサー、ディレクターが多い中、栗原さんの平均担当期間は、1年から1年半。マンネリ化したやり方を破壊し、新しい挑戦へと導く。ミッションを遂行したら、次のチームへ行く。日本テレビの“壊し屋”は、チームの新陳代謝を促して回っているというわけだ。

CMの数でドラマをつくる

見た目も大柄でクマのような出で立ちの栗原さん。さぞかし荒々しく既存のやり方を破壊しているにちがいない……。と思いきや、意外や意外、その正反対なのだ。徹底的に本質を追求し、細部に至るまでを綿密に考える方法で番組を作っていく。

あるとき、栗原さんは、朝の番組で日光の滝の生中継を担当することになった。その尺、たった3分半。通常であれば、一度下見をしたら、あとは当日の撮影で終了するような仕事だ。

ところが栗原さんの場合、そうはいかない。「滝の写真をいろいろ撮って来て、それでも『あれ? どうだったかな?』と思ったらまた現場まで車を運転して行って、また悩んで。そうこうしていると、地域の観光課の人がやって来て、『この前来た○○テレビはここをカメラ位置にしていたよ』なんてアドバイスしてくれるけれど、すると絶対その位置からは撮りたくなくなるんですね(笑)。そんなふうに考えることに夢中になるから、いろんなことを忘れちゃって、本当、ダメなんですけどね……」。

初めてドラマ制作に携わったときもそうだった。バラエティー出身の栗原さんが最初にドラマの脚本を書いたとき、番組の間にオンエアされるCMを視聴者に跨いでもらえるよう、脚本の中にCMが入る場所を細かく書き込んでいった。それを見たある俳優さんは、ものすごく驚いたという。

「僕は何秒のCMが何回入るかを先に計算して、じゃあ、ここでこういう盛り上がりが必要だから、これくらいのエピソードが必要で……という順序でつくっています。ただドラマの脚本は、途切れなく書くのが一般的らしくて、ドラマ班のプロデューサーからは、『すごく変わってるね』と珍しがられました」

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