社内のエリートが転職で成功するとは限らない 「現職」と「転職時」の評価はどこが異なるのか

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また、グローバルな競争環境が激化する中で、新規事業の立ち上げや、グローバル展開、SDGs・ESG対応、CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)運営など、既存社員では対応が困難な場面が増えてきています。これらを実行できる経営幹部候補として、コンサルティング会社の出身者であるポストコンサルに白羽の矢が立っており、採用したいと手を上げる企業で争奪戦となっています。

さらに、現代では多くの企業が、成長のスピードをあげるために、M&Aを積極的に行うようになりました。国内での業界再編はもちろん、海外展開を加速するうえでも欠かせない手段となっています。そのため、事業会社でのM&A経験者や事業投資経験者など、M&A関連業務の経験者へのニーズはこれまで以上に高まっています。

もちろん、人材市場でのニーズはその時々によって変化します。しかし、これらの領域については、日本企業の抱える構造的な問題と直結するニーズであるため、しばらくの間は高い需要が続くと予想されます。

それでも「選考対策」は不可欠

それでは、高度な専門性や市場で高く評価されるキャリアがあれば転職活動はうまくいくのでしょうか。答えは残念ながら「NO」です。採用企業が求めるスキルや経験が十分あるにもかかわらず、苦戦する方が多いので注意が必要です。

書類選考や面接を乗り越えて、高い評価を受けるためには、「選考対策」が不可欠となります。選考対策と聞くと、応募者の魅力を等身大以上にアピールすることのように捉える方がいますが、それは誤解です。本来の選考対策の趣旨は、応募者の経歴・人物を“誤解のないように”、“わかりやすく”、“聞き手の気持ちをくみながら”、説明することにあります。

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考えてみれば、ビジネスの場においてプレゼンの準備をしたり、練習をしたりするのは当然のことです。自社製品を売る営業マンも、資金調達を行う起業家も、魅力をわかりやすく伝えるために資料を練り込み、想定問答に対する回答も考えておくのが通常です。しっかりした人であれば、ロールプレイングで実際に話す練習もしておくかもしれません。

むしろ、このような準備ができない人は、一流のビジネスパーソンとして評価されないでしょう。転職活動もこれと同じです。相手に考えさせる負荷を押しつけるのではなく、自分の魅力や実力を誤解のないように伝える努力をできる人材が、企業から求められているのです。

転職活動の合否で後のキャリアが変わるのはもちろんのこと、面接での評価によって、提示される年収が数百万円単位で変わることも珍しくありません。このように、人生に大きな影響を与える選考対策ですが、大型資格取得のように膨大な時間と労力がかかるわけではありません。その意味でも、おろそかにせずにしっかりと準備してから転職活動に挑んでいただければと思います。

渡辺 秀和 コンコードエグゼクティブグループ CEO

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わたなべ ひでかず / Hidekazu Watanabe

コンコードエグゼクティブグループ CEO。一橋大学商学部卒業。株式会社三和総合研究所(現:三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て、2008年、株式会社コンコードエグゼクティブグループを設立。「コンサル&ポストコンサル転職」を運営する。1000人を越えるビジネスリーダーのキャリアを支援し、日本ヘッドハンター大賞初代MVPを受賞。
東京大学でキャリアデザインの正規科目「未来をつくるキャリアの授業」を立ち上げ、コースディレクターとして授業の設計と講義を担当。著書『未来をつくるキャリアの授業』(日経新聞出版社)や『コンサル業界大研究』(産学社)など。

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