「仲良く貧乏」を選んだ日本は世界に見放される 1人当たりGDPは約20年前の2位から28位へ後退

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日本経済を復活させるには、この3つの改革に取り組むことが必要でしょう。

では日本は今後、ランキング上位国に倣って改革を進めることができるでしょうか。個人的には、日本が自らの判断で大きな改革に踏み出す可能性は低いと思います。政府・国民の「豊かさ」に対する考え方が、上位国と日本では根本的に違うからです。

豊かさと平等は二律背反の関係

多くの上位国では、「経済成長による豊かさ」が事実上の国是になっています。少しくらい国民の経済格差が広がっても、失業者が出ても、国全体が経済成長すれば、豊かに暮らす国民の絶対数が増えます。

一方、かつてシンガポールで優秀な子供を増やすために大卒女性による出産が奨励されたように、上位国の政府は「国民の平等と融和」をあまり重要視していません。

そして、上位国の国民は、こうした政府の国家戦略を支持しています。抑圧的な政治体制に不満はあるようですが、政府の目論見通り国民の暮らしはどんどん豊かになっています。

それに対し日本では、政府も国民も「国民の平等と融和」をまず目指します。「経済成長による豊かさ」は、さほど重要な目標ではありません。極端に言うと「格差がある、ギスギスした豊かな社会より、みんなで仲良く貧乏に暮らす方が良い」と考えています。

しかし、このままの凋落が続けば、日本はいったいどうなるでしょう。いまは過去の蓄積によって何とか生活できていますが、やがて世界からヒト・モノ・金が集まらなくなり、「みんなで仲良く貧乏に暮らす」ことすら難しくなるでしょう。

政府も国民も、1人当たりGDPの推移を直視し、その背後にある「豊かさと平等はトレードオフ(二律背反)の関係にある」という事実にしっかり向き合う必要がありそうです。

日沖 健 経営コンサルタント

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ひおき たけし / Takeshi Hioki

日沖コンサルティング事務所代表。1965年、愛知県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業。日本石油(現・ENEOS)で社長室、財務部、シンガポール現地法人、IR室などに勤務し、2002年より現職。著書に『変革するマネジメント』(千倉書房)、『歴史でわかる!リーダーの器』(産業能率大学出版部)など多数。

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