「仲良く貧乏」を選んだ日本は世界に見放される 1人当たりGDPは約20年前の2位から28位へ後退

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こうした国家戦略は、ルクセンブルクの専売特許ではありません。ランキング上位国のうち、アイルランド(2位、9万9013ドル)、スイス(3位、9万3720ドル)、そしてアジア首位のシンガポール(7位、7万2795ドル)はいずれも小国で、ルクセンブルクとよく似た国家戦略です。

思い切った国家戦略には、国民の反発が付き物。ただ、小国なら政治のコントロールで国民のコンセンサスを得るのが比較的容易です。ルクセンブルクは、ナッサウ=ヴァイルブルク家がルクセンブルク大公の職を世襲する立憲君主制で、大公は強力な政治権限を持っています。シンガポールは、PAP(人民行動党)による事実上の一党独裁です。

つまり、ランキング上位国に共通するキーワードは、「小国」「金融」「移民」。1人当たりGDPを見る限り、この3点が国家が経済的に成功する条件と言えるでしょう。

アメリカとドイツは参考になる

となると、悩ましいのが日本。日本のように1億2千万人もの人口を抱える「大国」が、ルクセンブルクやシンガポールと同じやり方をするのは非現実的です。日本経済は、為す術がなく、お先真っ暗なのでしょうか。

ここで参考にしたいのが、日本と同じく「大国」で、20世紀に製造業を中心に隆盛したアメリカとドイツです。日本がどんどん順位を下げているのに対し、アメリカは10位以内(6位、6万9231ドル)、ドイツは20位以内(18位、5万0795ドル)を長く堅持しています。

アメリカとドイツに共通し、日本と異なるのは、次の3点です。

① 移民の受け入れ。総人口に占める移民の割合は、アメリカ15.3%、ドイツ18.8%と高水準です。両国とも近年は移民増加の弊害に悩まされていますが、長い目で見ると移民が経済を高度化させました。

② ものづくりの革新。アメリカ・テスラの電気自動車やドイツの「インダストリー4.0」のように、アメリカ・ドイツの製造業は、大胆にITを取り入れてものづくりを革新しています。

③ IT・金融など成長分野でのクラスター形成。アメリカのシリコンバレーやドイツのフランクフルト金融市場のように、IT・金融など成長分野でクラスター(産業集積)の形成に取り組んできました。

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