部下をやる気にするオンライン時代の傾聴のコツ 「リモートで部下と意思疎通できない」は言い訳

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上司の指示によって部下が動くだけの「指示命令型の組織」は、たとえるなら、昔の軍隊のような組織です。

カリスマ性のあるリーダーが率いていれば強いかもしれませんが、そうでなければ、リーダーに負担がかかりすぎたり、あらぬ方向に組織が進んでしまったりして、それを止める者もなく、難しい状況を生みかねません。

これは私の意見ですが、これからの組織運営では「共創型」を意識していくことが大切だと思います。現代の組織運営では、年上の部下もいれば、LGBTQIAの方も働いている。また、リモートでの接点しかなく、実際にリアルで会ったことがない部下もいれば、シフト制のため働く時間帯が異なる人もいる。

そんな多様性のある職場では、お互いのことを「聞き合う」文化を形成するのが重要だと考えています。そのために、上司と部下が「指示を出す」「指示をもらう」という固定観念を捨て去る必要があると思います。

上司が正しいとは限らない時代

実は、この「上司は部下に指示を出し、部下はその指示を遂行する」という関係は、かつての高度成長期の企業においては有効でした。しかし、「オンライン会議などの知識は、上司よりも部下のほうが持っている」という例でもわかるように、現代は、必ずしも上司のほうが経験豊かで正しいとは限らない時代になってきました。

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昔は、過去の成功例を踏襲することに意味があったのですが、現代は、ビジネスにおける「最適解」が昔のように1つではなくなったとも言えます。

そんなわけで、上司が最適解を常に持っているわけでもないし、多様性を包含するならば、紋切り型で指示をすること以外の選択肢も考えなくてはならなくなりました。

だからこそ、「上司は指示を出すもの。部下は指示を与えられるもの」という固定観念を打破して、多くの人の意見を聞き、取り入れ、議論をするような新しい組織運営を目指す必要が出てきていると私は考えます。

もしかすると、こういった潮流を敏感にとらえた組織運営をしていかないと、企業の生き残りすら難しくなってしまう。そんな時代に差しかかっているのかもしれません。

林 健太郎 リーダー育成家 合同会社ナンバーツー エグゼクティブ・コーチ

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はやし けんたろう / Kentaro Hayashi

一般社団法人 国際コーチ連盟日本支部(当時)創設者。1973年、東京都生まれ。バンダイなどに勤務後、エグゼクティブ・コーチングの草分け的存在であるアンソニー・クルカス氏と出会い、プロコーチを目指して海外修行に出る。2010年にコーチとして独立。日本を代表する大手企業などで、のべ650人を超えるビジネスリーダーに対してコーチングを実施。『コーチング忍者の2分コーチング入門講座』を運営。著書に『できる上司は会話が9割』(三笠書房)。

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