大臣在任の367日はびっくりの連続だった--『招かれざる大臣』を書いた長妻昭氏(前厚労相、衆議院議員)に聞く

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──現職大臣ながら、駅頭に立つのを恒例にしたようですね。

タウンミーティングや地元での会合は欠かせない。地元の声援があればこそ当選しているのだから。

もちろん、大臣としても職務は全うしたと思っている。年金記録問題では、直近で1200万人の記録が戻った。それにより、計算できただけで少なくとも1兆4000億円の年金が戻り、今も月3万人ペースで戻っている。

このほか、診療報酬を10年ぶりにプラスにし、病院、外科、産婦人科、小児科への配分が手厚くなるように変えることで、医療崩壊に一定程度歯止めがかけられればと取り組んだ。生活保護の母子加算を復活させたり、父子家庭に出ていなかった児童扶養手当も出すようにした。

去年の4月は255万人の非正規雇用の方が新たに雇用保険に入れるような規制緩和もした。マニフェストでは4年でやるべきとした事項も前倒しでやっている。

──省内にたくさんのプロジェクトチームを新設しました。

36の省庁・局間横断のプロジェクトチームを作った。それによって、役人文化を変える仕組みを埋め込むことができたと思う。責任者と目的をはっきりさせ、その目的が実現できるまでプロジェクトチームは解散しないと宣言して始めた。いったん決まるとまじめに取り組む習性が役所にはある。期待できる。

──心残りはありませんか。

年金、医療、介護を合わせた、少子高齢社会を克服する日本モデルの実現だ。全国に1万カ所ある「中学校区」に注目している。この構築は道半ばになった。

日本では地縁、血縁、社縁が薄くなってきている。行政が新しい地縁という形で「中学校区」というエリアを設定して共助を勧める。単身が当たり前になっても、一つの地縁で再構築して助け合おうというものだ。税金だけで一人ずつという社会保障システムには無理がある。

(聞き手:塚田紀史 撮影:梅谷秀司 =週刊東洋経済2011年3月12日号)

ながつま・あきら
民主党筆頭副幹事長。1960年生まれ。慶応義塾大学法学部卒。NEC、日経BP社を経て2000年衆議院議員初当選(小選挙区東京7区=中野区・渋谷区)。現在4期目。野党時代に年金記録問題で政府を追及し、政権交代に貢献。鳩山内閣、菅内閣で厚生労働相を務め、「脱官僚」を目指した。

『招かれざる大臣朝日新書』 735円 215ページ

  

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