トヨタとテスラの勝負を占う3つの重大ポイント 「論語と算盤」が意外なカギを握るかもしれない

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テスラといえばEVメーカーとして知られていますが、その実態はテクノロジー企業とみなすのが妥当です。例えば、車両が常時インターネットに接続されており、ハード(車体)を刷新しないまま、自動運転などのソフト面の性能を高め続けている点。こうした「ソフトウェアをアップデートする」発想はテクノロジー企業ならではのものであり、既存の自動車メーカーも追随しつつあります。

物理学的思考を
持ち込んだテスラの「ギガファクトリー」

テスラの工場「ギガファクトリー」もまた革新的です。そこにあるのは「現状や常識を疑う」物理学的思考です。大学で物理学を専攻したイーロン・マスクCEOについて、私はこれまで「宇宙レベルの壮大さで考えて、物理学的ミクロレベルで突き詰める」人物だと評してきました。

イーロンは民間宇宙企業「スペースX」を創業しロケット開発を進めていますが、それは「環境破壊が進む地球から、人類を火星に移住させる」ため。またEVのみならず、太陽光発電などクリーンエネルギーのエコシステムを構築しようとしているのは「地球の環境破壊を少しでも遅らせるため」。すなわち「人類救済」こそが、彼のミッションなのです。こうした発想のスケールはまさに宇宙レベルです。

一方、物理理学的思考はどのように発揮されているのでしょう。彼は、2016年株主総会でこんな発言を残しています。

「工場もプロダクトであると考える」

「工場を、マシンをつくるマシンと考える」

「マシンである自動車を進化させるより10倍も、マシンをつくる工場を進化させたほうが効果が高い」

この発想は「アウトプット(生産台数)=ボリューム(生産規模)×密度(サプライヤーを含めた生産拠点の稠密性)×速度」の式に落とし込まれ、ギガファクトリーを支えています。従来、工場といえば労働投入量や稼働率、労働分配率、在庫回転日数などを指標に運営されていましたが、それとは一線を画しています。

ここでいう密度とはパワートレイン、サスペンション、電池(バッテリー・パック)、電装部品など部品のサプライヤーが自動車メーカーに対して担ってきた機能・役割をテスラのギガファクトリーが独自システムとして担い、ギガファクトリー内で自動車製造を完結できる仕組みを整えていることを指します。このような一貫生産体制はモノを運搬するムダを省き、生産速度やコスト面の向上に繋がります。

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