トヨタとテスラの勝負を占う3つの重大ポイント 「論語と算盤」が意外なカギを握るかもしれない

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ギガファクトリーは車両の組み立てラインも独特です。車両がコンベアで運ばれてくるのを一般企業の工場とするなら、車両が無人搬送車の上に載せられラインを流れてくるのがテスラの工場です。これは、工場の拡張性、柔軟性、機動性の向上のためにも優れた手法です。車両に不具合を見つけてもコンベアを止める必要がなく、不具合のあった車両だけを除けばいいからです。

各種の開示資料においても、製造プロセスのアップデートを必ず盛り込んでいるのがテスラ。これからも「マシンである自動車を進化させるより10倍も、マシンをつくる工場を進化させたほうが効果は高い」とする発想で、ギガファクトリーの生産性を追求していくことでしょう。

トヨタらしさの象徴「カンバン方式」

CASEをめぐる対応において、テスラを筆頭とする最先端プレイヤーからの出遅れがささやかれたトヨタですが、豊田章男社長の危機感は本物です。「私はトヨタを、クルマ会社を超え、人々の様々な移動を助ける会社、モビリティ・カンパニーへと変革することを決意しました」と宣言し、改革を進めています。

またトヨタにしかない「凄み」の1つであるトヨタ生産方式は、次世代自動車産業においても、競争優位を失ってはいません。こと車両の量産化においては、車両というハードが従来のガソリン車の延長にある限りは、従来型の生産ノウハウ、量産化のテクノロジーがものをいいます。

トヨタの生産方式といえば、いわずとしれた「カンバン方式」です。その特徴は徹底的なムダの排除にあります。異常が発生したら機械が止まるために不良品が生産されず、人間ひとりが何台もの機械を運転できるという「自働化」や、必要なものを必要なだけ必要なとき製造することでムダ、ムリ、ムラをなくそうという「ジャストインタイム」の考え方が象徴的です。

もっとも、トヨタにおいてカンバン方式は単なる生産方式の枠を超え、長年かけて築き上げてきた経営モデルです。豊田章男社長も「トヨタらしさといったときに、真っ先に頭に浮かんだのは『トヨタ生産方式』と『原価低減』」と発言するなど、強いこだわりを見せています。また自働化とジャストインタイムについても次のように解釈を加えています。

「(自働化について)私の解釈は、"やっぱりヒト中心”にしてくれってことなんです。そこで働いているヒトの気持ちに成り代わって(考える)。自分は安全地帯で、『効率を上げろ』『人を抜く(減らす)』と言うことだけで考えてはダメ」

「(ジャストインタイムについて)何が言いたいかというと、前もってつくっておきましょうなんていって、1000万台のお客さん相手に、どういうスペックか?なんてできないでしょ…と。できないことは、できない。じゃあ『リードタイムを短くしておこう』ということが大切になる」(統合報告書2021より)

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