「10歳少女レイプ中絶事件」フェイク騒動の顛末 真実をめぐって有力メディアも右往左往
13日には、オハイオ州の男がレイプ事件で罪状認否を受けたという地元紙コロンバス・ディスパッチの報道によって、事実関係が以前よりも明らかとなった。
ところが、その頃には、過熱する論争によって大手メディアは居心地の悪い、厄介な状況に立たされるようになっていた。記者の情報収集を上回る速度でストーリーが政治化され、事実の外側で独自のニュースサイクルが高速回転するようになっていたためだ。
ポインター研究所のメディア倫理専門家ケリー・マクブライド氏は、「この事件は極端なものであったため、ああいった疑問が出てくるのは当然といえた」としたうえで、こう続けた。ジャーナリストにはそうした疑問に答える報道を行う必要があり、「追加の事実もなく、より多くの意見を打ち出しているだけではいけない」。
フォックスもWSJもコメントなし
フォックス・ニュースの広報担当者は、ワターズ氏やほかの番組司会者の発言についてのコメントを避ける一方で、この事件が事実だったと確認する報道を12日に行ったことに言及。ウォール・ストリート・ジャーナルの広報担当者は、コメントの求めに応じなかった。
インディアナポリス・スターは最高裁判決後の中絶制限を検証する7月1日付の記事で、この事件を初めて世の中に知らせた。記事が言及したのは、ケイトリン・バーナード医師が扱った事例だ。
バーナード医師はインディアナポリスの産婦人科医で、オハイオ州からやってきた10歳のレイプ被害者の中絶手術を行った。この少女が住むオハイオ州では妊娠6週目以降の中絶が禁止されたため、妊娠6週目を過ぎていたこの少女は中絶を受けるためにインディアナ州に移動しなければならなかった。
このショッキングな話は世界から注目された。その1週間後には、バイデン大統領もホワイトハウスのスピーチでこのニュースに触れ、「完全に間違っている」と最高裁の判決を批判した。