底堅くなってきた日本株が抱える「中国リスク」 市場は米インフレ指標に対して落ち着いてきた

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また、景気や企業収益の悪化懸念に関しては、15日発表の小売売上高が不安を和らげることとなった。6月の小売売上高は前月比1.0%増と、5月の同0.3%減からプラスに転じた。

そもそも5月の前月比マイナスについては、自動車を除くと0.5%増で、部品不足などで自動車が十分に生産できず、自動車を買いたくても売るための販売在庫が足りなかった、という面があった。そうした生産面での制約が6月にはやや緩み、前述の小売売上高総計で見ても、自動車を除くベース(6月はやはり1.0%増)で見ても、個人消費がしっかりと推移していたということが示されたと解釈できる。

筆者は6月6日付の当コラム「日米の株価がもう一段上昇しそうな『2つの理由』」で、ペントアップデマンド(何らかの要因で抑制された需要で、その後反動増をみせると見込まれるもの)の1つとして、アメリカの個人消費を理由とともに挙げていたので、当コラムの読者にとっては、6月分の小売売上高の増加は不思議でも何でもないと感じていただけたことと思う。

こうしてアメリカ株は、すぐにではないだろうが、徐々に薄皮がはがれるように明るさを増していくだろう。それは日本株にとっても株価上昇要因だ。

中国の債務残高は「2008年のアメリカ」よりも深刻

ただ現在、内外市場がそれほど懸念していないだけにかえって警戒すべきだと考えるのは、「中国リスク」だ。こう書いたのは、中国に関するさまざまなリスクを含めているためである。

そうしたリスクの1つは、マクロ経済の減速だ。15日には同国の4~6月のGDP統計が発表され、実質GDPは前年同月比でわずか0.4%の増加にとどまった。前期比(同国では年率換算していない)では2.6%減であった。

また、民間債務の大きさも警戒すべきだろう。BIS(国際決済銀行)のデータによれば、中国の民間(家計および企業)非金融部門(銀行、証券、保険を除く)の債務残高は、経済の大きさを示す名目GDPの2.2倍程度に相当する。比較対象として、2008年に起きたリーマンショックは、行きすぎた融資(とくに住宅向けサブプライムローン)の不良債権化を起因としていた。当時のアメリカの民間非金融部門の債務残高のGDP比は1.5倍程度であったので、今の中国のほうが事態が深刻だといえる。

個別企業の債務状況についても、以前は中国恒大集団の債務不履行が市場で話題となった。最近でも、7月3日には不動産大手の世茂集団(シーマオ・グループ)が社債の元利金を支払えず、債務不履行に陥った。このため、投資企業の復星国際など他社の社債価格も圧迫を受けている。

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