働き始めた時点で、その人に対する違和感はありました。たとえば、何も教わらず、いきなりOJTだったんです。社内ネットワークへの入り方など、基礎的なことを何も知らない状態で現場に放り込まれたので困惑しました。
――「背中を見て学べ」というスタンスは近年になってよく非難されるようになってきた姿勢ですが、少なくともゆりなさんの場合、背中を見ていれば学べるような仕事ではないと感じます。
そうですね。思い出せる限り、最初の明確なハラスメントは、「前に言っていたことと違うことを言われる」ことでした。研修期間のある日、資料作成を命じられたんですが、作業内容について質問したら「そういうのは自分で考えて」と言われて、自分なりに考えて作ったものを提出したら求めていたものと違ったとのことで、「わからないんだったらその場で聞いてくれないと!」と言われたんです。
――そういった掌返しはパワハラの1つの典型のように思います。
その他にも、意味のわからないフィードバックが多くて、そもそもなんのためにやるのかわからない作業ばかり命じられていました。今思えば、会社にいる間延々無意味なことに時間を使わされているような状態でした。
「パワハラだ」と思うのはなかなか難しい
――本連載に先駆けておこなった聞き取り調査でも、同様に「意味のない作業をさせられた」という声がいくつも挙がりました。
私も早い段階で「この人の指示は的確でない」「機嫌次第で言うことが変わる」と気づいていました。
ただ、逆に言えば「指示が的確でない人」「機嫌次第で言うことが変わる人」という認識だけで、不思議と「パワハラだ」とは思えていませんでした。のちに、そういった振る舞いが意図的にやられたことだったんだと知るまでは、気づかなかったです。
――それはなぜですか?
やっぱり、渦中にいると自分を客観的に見られなくなるんですよ。なので、毎日つらくはあったけど、会社に行きたくないと思ったことはなかったんです。がんばらなくちゃ、という感じで。
あとは、慣れていたというのもあって。その前にいた会社でも同僚のちょっと変な人に粘着されていたことがあったんです。自分はそういう人を引き寄せがちなのかな、と思っていました。
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