自動車業界の関係者を吸い寄せる「展示場」の内側 テスラ「モデルY」、中国の「50万円EV」を徹底分解
もう1つの目玉、宏光MINI EV のほうはどうだろうか。同車は2020年に中国で販売を開始し、発売当時の最安グレードが3万元を下回っていたことから、「50万円EV」と言われる。
モーターなど中核部品については、「しっかり作られている。これで50万円という価格は驚き」(白濱氏)。バッテリーはリチウムイオン電池だが、正極材に安価なリン酸鉄系(LFP)を使っている。重さは約120キログラムで、車両重量の約15%を占める。また、ステアリングのアシストモーターは日本電産製だった。
他方、ECUに使われる半導体は小型の家電用と見られるものもあり、「まるでパソコンのような作り」(同)だ。熱処理は水冷ではなく、コストの安い空冷を採用している。室内に目を転じると、シートの薄さが目立ち、展示車では運転席側のみエアバッグが搭載されていた。履いているタイヤは12インチという細さだ。
展示車は最高時速80キロメートル、航続距離170キロメートル。いわば街乗りのコミューターに徹して開発されている。カネを使うところには使い、削れるところは徹底して削るということだろう。ただ「外見には金をかけている。安っぽく見られないようにする努力はすごい」(同)。確かに、実車のドアを閉めてみると、「バン」と重みを感じる音がした。
ベンチマークされる日本製EVがない
競合車のベンチマーキングは本来、自動車メーカーが自ら行うものだ。が、近年、ケアソフト社のような独立系企業に委託するケースが増えている。
背景としては、ベンチマーキングの結果を部門横断的に共有できること、精緻なデータであればすぐに開発や設計につなげられることなどがある。そして何より、自動車業界が大転換期を迎える中で、従来の社内の発想だけでは競争に勝ち残っていけないという現実がある。
ケアソフトは今後、ベンチマーキングの対象車種を増やす考え。瑞浪の展示場では、2021年の世界カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した独フォルクスワーゲン「ID.4」や、中国・長城汽車の「好猫(グッドキャット)」の分解部品の展示を計画している。
これらの車種は世界の顧客からの要望によって決められるが、1つ寂しいのは、ベンチマーキングの候補に日本製のEVが1台も挙がっていない点だろう。ベンチマーキングの世界の変化は、日本製EVの現状を反映しているといえそうだ。
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