防衛費を「5年で倍増」はどのくらい現実的なのか 実現すれば米中に次ぐ、軍事大国に大きく変貌する

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こうした倍増論に自民党内にも異論はある。例えば安倍晋三政権で防衛相を務めた岩屋毅衆院議員。「数字ありきの増額論は不適切」とし、「防衛力の充実や強化は必要。しかし防衛費は数値目標が先にあって、そこに向かって買い足していくような雑なやり方をしてはいけない」とクギを刺す。

防衛費の4割は人件・糧食費が占める。今も定員割れに悩む自衛隊は予算があっても隊員は増やせそうにない。増額された予算の大半は護衛艦や潜水艦、ミサイルなどの装備品に充てられる。

だが、新たな装備品を買っても、隊員を手当てして使いこなせるよう訓練できなければ宝の持ち腐れだ。

財源は「防衛国債」

財源も課題だ。「防衛国債」の発行が水面下で議論されているが、詳しい検討は参院選が終わったあと。倍増させる5兆円超は、公共事業費5兆6000億円に匹敵する。

ロシアのウクライナ侵攻もあって、防衛費の増額に世論は肯定的だが、具体論になったとき、これだけの予算を毎年配分することに国民の同意を得られるのかどうか。政府の丁寧な説明が必要だろう。

日本の防衛では今年、もう1つ大きな論点がある。岸田首相がバイデン大統領に伝えた、敵基地攻撃(反撃)能力の保有である。

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