マレリだけじゃない、日産系部品メーカーの苦悩 半導体不足やコロナ痛手、ゴーン時代の弊害も
ところが日産はゴーン元会長の逮捕や業績が悪化したことで、方針を転換。現在、スペインやインドネシア工場の閉鎖によって年間生産可能台数と、商品ラインナップを2割減らす構造改革を進めている真っ最中だ。
日産系部品メーカーはこの流れに乗り遅れた。
モルガン・スタンレーMUFG証券の垣内真司氏は「日産が進めている構造改革や生産台数の減少に対して、主要部品メーカーは生産設備の最適化が進んでいない部分がある」と指摘する。日産系以外の部品メーカーからは「日産を主要取引先とする部品メーカーでは、日産以外のメーカーの開拓が進んでいない面がある」(ホンダ系部品メーカー首脳)との声も上がる。
その象徴が、事業再生ADR(裁判外紛争手続き)から民事再生に移行したマレリだ。前身のカルソニックカンセイは2017年に日産と資本関係を解消したが、日産を主要取引先とするのは変わらなかった。
そして、ゴーン氏が日産から追放されたあとの2019年になっても、イタリアのマニエッティ・マレリと経営統合するなど拡大路線をとり続けた。合併後の体制の最適化が進まないままコロナ禍を迎え、経営危機に陥った。
生産体制の合理化急ぐ
部品メーカーが取り得る対抗策は生産体制の合理化や見直しの動きしかない。
河西工業は、すでに欧州・スロバキア工場の撤退を決め、日本やアメリカでは工場の閉鎖を計画する。北米ではメキシコの生産比率を高め、欧州向け部品供給拠点としてモロッコへの進出も検討する。
サスペンションなど足回り部品を主力とするヨロズは全拠点で1カ月に決まった休業日を追加で設けて、生産を集中的に行い工場の稼働効率を高める取り組みを始める。
内外装部品を中心に手がけるファルテックは7期連続で営業赤字となっている英国拠点の生産体制見直しを本格化。製造技術や設備保全の人員を国内から派遣し、最終的には間接部門や保全分野の人員削減を図る。
それでも、足元には不安が残る。日産の2022年1~5月期のグローバル生産台数は130万台と、前年同期比17%減だ。国内、海外ともに生産台数は上向いておらず、「1週間前に減産が通達されることがいまだに発生しており、6月に入っても計画値を下回っている」(日産系部品メーカー幹部)。日産幹部は「上海のロックダウン影響の余波が7月頃まで続く」と話す。
日産側も生産停滞のネックとなっている半導体で、一定水準の在庫の確保や汎用性の高い半導体を前提とした部品の開発などを通じた安定調達への取り組みを水面下で検討している。
日産の内田誠社長は「厳しい時代にどのように成長していくかはサプライヤーと常に議論し、共有している」と話す。このまま不安定な生産が続きマレリのように部品メーカーの経営危機が広がることになれば、日産の生産体制が揺らぐことにもなりかねない。まずは密接に連携していかに生産の効率を高めていくか。地道な活動を続けるしかない。
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