コロナ禍で行き詰まった人を再起「座間市」の凄み 困窮者支援で注目「ゆるくつながる」伴走型支援
もっとも、店を閉めたことで月々の支出は止まったものの、スナックの収入も同時に途絶えてしまった。当面はほかのスナックで働けばどうにかなるが、別れた前夫との間に3人の子どもがおり、子どもの学費を工面しなければならない。そこで、座間市社協に生活福祉資金の総合支援資金を借りに出向いた。
総合支援資金は生活再建のために月15万円(2人以上世帯は月20万円)を3カ月、計60万円を10年間、無利子で借りることができる特例貸付である。1回目は基準を満たせば借りられるが、延長し2回目、3回目を借りる場合は自立相談支援を受ける必要がある。このときに自立サポート担当の吉野とつながった君塚は、「スナックのママ」ではない次の人生を模索し始める。
実は、当初は物流関連や介護の仕事を考えていたが、就労相談員としてサポートした内山の思いもよらない提案で、彼女の新しい道が拓けた。
「君塚さん、ゴルフはしますか?」
「ゴルフですか? 以前はやっていましたが……」
「キャディに興味はありますか?」
「えっ?」
「やってみて損はない」
聞けば、横浜市内の名門ゴルフ場がキャディを募集しているという。一瞬「キャディ?」と思ったが、青々とした芝生が広がるゴルフ場は働く場所として気持ちいい。会員も経営者など客層が高く、これまでの接客の経験が生きるかもしれない。「やってみて損はない」と思った君塚は、内山の提案に応じてキャディの研修生として働き始めた。
実際に始めたところ、18ホール歩き回るので体力的につらく、距離計測が想像以上に難しいが、週3回、朝、ゴルフ場に通った。2022年3月には研修も終わり、一人前のキャディとして働いている。
「これまでずっと夜の店で働いてきましたが、今から思えば、甘えがあったかな、と。コロナで大変な思いをしていますが、44歳にして人生を変える、いいきっかけをもらったと思います。住宅ローンに総合支援資金と借金もあるけど、負けませんよ、私は」
もう1人、生活援護課の支援で生活を建て直した女性がいる。座間市内で30年以上、美容院を営んできた竹内スミ子(仮名)である。
彼女の場合、2020年4月下旬に自分で生活援護課に相談に来た。「緊急事態宣言の発令でお客さんが誰も来ない。このまま続けられるか不安だ」という内容だった。対応した相談支援員の大島が詳しく話を聞くと、翌月の5月に借りている店舗兼自宅の契約更新があるという。美容師という仕事に見切りをつけようとしているということもわかった。
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