コロナ禍で行き詰まった人を再起「座間市」の凄み 困窮者支援で注目「ゆるくつながる」伴走型支援

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普段から相談対応や家庭訪問と忙しく動き回るケースワーカーが、最も忙しくなるのは「締め日」の前だ。生活保護費は、その人の収入に応じて金額が異なるうえに、不正受給がないかどうかのチェックも必要だ。法令規則に則って、生活保護受給費の計算や事務作業が発生するため、締め日の残業がどうしても増えてしまう。ケースワーカーが「計算ワーカー」と言われるゆえんでもある。

生活援護課を率いる林も、自立サポート担当になる前は生活保護のケースワーカーを9年間務めた。

NPOが中心の「チーム座間」と連携し官民がタッグを組む

その自立サポート担当も、負けず劣らずバタバタしている。彼らの場合、困窮状態に陥っている人とのアポで手帳がびっしり埋まる。相談のときは役所に来てもらうことが基本だが、引きこもり状態など出てこられない場合はアポを取り、自宅を訪問する。それゆえに、筆者が自立サポート担当の武藤や吉野文哉に電話しても、不在でなかなかつながらない。

実際に面談する場合も、その人の状況に応じて生活援護課の就労相談員や子ども健全育成支援員、あるいは座間市社会福祉協議会の家計改善相談員などとともに、自立のための最善の手を考えていく。

このように多忙を極める自立サポート担当だが、毎月の第2木曜日は輪をかけて忙しくなる。この日は、「チーム座間」のメンバーが集まる月1回の支援調整会議が開かれるからだ。

チーム座間とは、生活援護課とともに困窮者支援に当たっている組織や団体とのネットワークの総称だ。チーム座間はコロナ禍において最大限に力を発揮した。

夜の店を卒業したスナックのママ

コロナ禍による自営業者の苦境は、大和市でスナックを経営していた君塚瞳(仮名)のケースに見て取れる。

父親の顔も名前も知らずに育ったという君塚は、10代の頃から水商売の世界で生きてきた。「人と話すのが好きで、この世界の水が合った」と語るように、気さくでチャーミングな君塚はどこの店でも人気だった。そして、30代半ばに独立。カウンター7席と小さいが、経営者など地元の常連が集まるにぎやかなお店をつくり上げた。

ところが、新型コロナの感染拡大ですべてが暗転する。緊急事態宣言の影響で休業を余儀なくされたのだ。緊急事態宣言は5月25日に解除されたが、折からの自粛ムードでお店は閑古鳥が鳴いた。

コロナ禍はいずれ終息し、常連客は戻るかもしれない。でも、月々の家賃や水道光熱費を考えれば、いつ戻るともしれない客足に期待することはできない。このまま続けていてはいずれ破綻する──。そう思った君塚は、店舗の契約更新のタイミングだった2020年6月に店を閉めた。

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