太陽光パネル原料「多結晶シリコン」高騰の背景 スポット市場価格の上振れが長期契約にも波及

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中国政府は2060年のカーボンニュートラル実現を目指し、再生可能エネルギーの大量導入を進めている。写真は甘粛省の太陽光発電所(中国の太陽光パネル大手、隆基緑能科技のウェブサイトより)

太陽光パネルの主原料である多結晶シリコンの市場価格が、10年ぶりの高値をつけている。中国有色金属工業協会のシリコン分会が6月22日に発表した最新データによれば、中国市場での取引価格は1トン当たり平均27万3100元(約550万7000円)と年初より17.8%上昇。2011年以降の最高値を更新した。

多結晶シリコンの市場価格は、2021年1月時点では1トン当たり8万元(約161万3000円)だった。それが同年11月には3倍以上の同27万2000元(約548万5000円)に高騰。続く12月は小幅に反落したものの、2022年に入って再び上昇していた。

「2022年を通じて見れば、多結晶シリコンの需給はおおむね均衡している。特に7月以降はかなりの増産が見込まれており、相対的には供給側に余裕があるほどだ。にもかかわらず市場価格が上がり続けているのは、スポット取引の影響が大きい」。前出のシリコン分会で専門家委員会の副主任を務める呂錦標氏は、価格高騰の背景をそう説明する。

2023年には供給過剰との予想も

呂氏によれば、多結晶シリコンの取引形態には長期契約とスポット契約の主に2つがある。太陽光パネルの大手メーカーは原料サプライヤーと長期契約を結び、契約期間中の取引量を定める一方、価格は固定せず毎月の交渉で調整する方法をとっている。

中国市場のシリコン原料の9割前後は、このような長期契約に基づいて取引されている。長期契約を結べない中小企業や新規参入企業は、残り1割前後のスポット契約で原料を調達しているが、スポット市場は規模が小さいうえに供給不足が続いている。そのため取引価格が上振れしやすく、それが長期契約の価格調整にも影響しているという構図だ。

中国政府は「二酸化炭素(CO2)の排出量を2030年までに減少に転じさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現する」という国家目標を2020年に打ち出し、太陽光発電を含む再生可能エネルギーの大量導入を推進している。

本記事は「財新」の提供記事です

これをきっかけに、原料メーカーの多くが多結晶シリコンの生産能力拡大を表明し、設備の新増設を急いでいる。前出の呂氏の予想によれば、中国の多結晶シリコンの年間生産能力は2023年までに225万トンに達する見込みで、市場は供給過剰に陥る可能性が高いという。

(財新記者:趙煊)
※原文の配信は6月22日

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