「最初から比べるとすごく進化していますし、アジア大会の出品としては問題ないと思います。ただ、厳しいことを言うようですが、本選で表彰台にのるためには、もう一皮むけることが必要。誰も見たことのない、オリジナリティーが要求されるのです。私のときには、動く付け合わせを考えました。ロール状になったシートを卓上で、ぱらぱらと開くことで、付け合わせが完成するというものです。石井くんには、これからそこを目指して頑張ってほしいと思います」と浜田氏。
一方、長谷川氏は「試作中、これじゃあダメだと言うと、じゃあどうすればいいんですかと答えを求めてくる。でも、答えはないんですよね。自分で探すものだから。本番で迷ってしまったら、もう負けです。オリンピックのアスリートがそうであるように、もうこれ以上ないというところまで自分を追い込み、本選のその日まで、進化を続けてほしい」と、それぞれに、愛の鞭ともいえる言葉が贈られた。
本選に向けてトレーニングが始まった
結果は7月半ばにメールで送られてくる。しかしその間も、石井氏にはひとときの休みもないのだ。「正直、すべての素材を提出し終わったときには達成感でいっぱいでした。ただ、ふと落ち着いて考えてみると、本選までにやらなければいけないことが山積みなことに気づき、気を抜いている場合ではないと、自分を戒めました」と。
喜ばしいニュースとしては、フランスでの本選で使うのと同じサイズ、仕様で仕立てたテストキッチンが完成したこと。今回の試作もほぼそこで行ったそうだ。また、石井氏は自身が勤める「アルジェント」のシフトからは抜け、本選までの間、トレーニングに専念できることになったそうだ。前回大会に出場した戸枝氏に比べれば、はるかに恵まれた環境にあると言えるだろう。
ところで、本選のテーマ素材が決まるのは、11月頃だという。それまで、何をトレーニングするのだろうと、不思議に思って尋ねてみたところ、じゃがいも、にんじん、玉ねぎなど、ガルニ(付け合わせ)として、必ず、使われる素材があり、その調理法に関して、さまざまなパターンを想定して詰めていくことがまず1つ。
さらに、本選の試食審査の際に熱々で出せるような、温度調整の実験を続けていくことも課題だという。コミ(アシスタント)の人選も2人までに絞られた。何回ものテスト調理を経て、相性や性格を見極めつつ、最終的に一人に決めるのだという。
戦いは始まったばかりだ。本選までの道のりはまだ長い。次回は、アジア予選の結果を伝えることになる。祈りながら、吉報を待ちたい。
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