「間違いを認められない人」の残念すぎる真実 「わかっている」のと「できる」のでは大違い

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その懐疑心に初めて亀裂が入ったのは、ジョー・ロームという著名な気候変動論者とともにテレビ討論会に出演した直後のことだった。テイラーは討論会で、いつもの主張をくり返した。

「地球温暖化の進行は予測されていたよりもずっと遅い。1988年にアメリカ議会に提出された当初の予測と比べると、まったくと言っていいほど地球は温暖化していない」

間違っても謝らなくていい

収録後の控室で、ロームから「事実を誤認している」と批判され、「証言の裏を取るべき」だと指摘された。テイラーはその挑戦を受け、データを細かく確認した。当然、自分の主張の正当性が証明されるものだと思っていた。

だが驚いたことに、正しいのはロームのほうだった。1988年の予測は、テイラーが思っていた以上に現実に近いものだったのだ。

「なにかを見落としてしまったに違いない」テイラーはそう考えた。

この情報は、同じく気候変動懐疑論者の、権威ある気候科学者から得たものだった。さっそくその科学者に連絡して説明を求めたが、その科学者は煮え切らない言葉を口にするだけだった。テイラーは20分ほど悩んだ末、ようやく自分が信頼していたこの人物が「意図的に事実をゆがめていた」ことに気づき、愕然とした。

以来、気候変動懐疑論者がデータを引用したときは、出典元の信頼性を確認するようになった。そのたびに、データのずさんさに落胆することになった。

新しい情報を得て考えを変えるのは、「間違って」いたわけではないのだ。それを恥ずかしいと受け止めなければならないとすれば、自分になんらかの過失があった場合だけだ。悪いとわかっていたことをしたために人に損害を与えてしまったときなど、意図的に偏屈で不注意な考え方をしていた場合などである。

たいていの場合、なにかを間違えて理解しているのは、悪いことではない。それは誰かに謝らなければならないようなことではないし、自己弁護をする必要も、卑屈になる必要もない。淡々としていればいいだけだ。

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