スポーツ庁はあるのに、そういや音楽庁がない訳 業界として成長したか立ち後れたかの差はどこ?

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50年以上前にも東京でオリンピックが開催されましたが、そのときはスポーツで食べていけるのは、せいぜい野球とゴルフ、ボクシング、レスリングくらいのものでした。しかも野球やゴルフはオリンピックの競技種目になく、ボクシング、レスリングもアマチュアしか出場できない時代でしたから、オリンピック選手といえども生活をするのは大変だったと思います。現在人気のサッカーも、当時は、将来サッカー選手になりたいと思っても、プロリーグは1チームたりともなかったのです。

そのため、1968年のメキシコ五輪で7得点をあげ、2005年には第一回日本サッカー協会殿堂にまで選ばれた日本サッカー界の草分け釜本邦茂元選手ですら、社会人チームで頑張るしかありませんでした。当時の男の子は、私を含めみんなかぶるのは野球帽です。

30年で大きくなったスポーツ界と変わらない音楽界

平成の時代となり、ようやくプロサッカーチームとしてJリーグが発足しました。それでも人気競技というにはほど遠く、サッカーだけでは、ほとんどの選手が食べていけませんでした。その後徐々に人気が高まり、女子サッカーやバスケットボールもプロチームが誕生し、今や職業にできるスポーツは、当時とは比較にならないほど多くなりました。諸外国に比べていまだ劣っているとの批判はあるものの、日本のスポーツ界は産業化し、その市場規模はこの30年で劇的に、といっていいほど大きくなったのです。

一方の音楽界は、産業としては人気歌手の楽曲販売が中心で、レコードからCD、さらに最近はインターネット配信と音源配信などに外形的変化はあるものの、市場規模に大きな変化はありません。

習い事としての音楽教室も近年大人の生徒が支えとなっていますが、せいぜい横ばいで1200億円前後、それに対してスポーツはスポーツジムだけでも1985年前後から急増して2019年には5000億円に迫る勢いです。

いったいこの差はどうして生まれたのでしょうか?

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