日本人が英会話苦手なのは「意訳」できてないから 英単語や英文法ができないのはさまつな問題

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みなさんがビジネスマンだったと仮定しましょう。先方の会社との契約を今月末までに締結し、先方との仕事の内容を細かく決めたいとき、どんな言い回しをするでしょうか。

さっきの要領だと、「私たちは(仕事の)詳細を決める必要がある=We have to decide the detail.」とかそういう日本語に直せば簡単かなと思うかもしれないのですが、これはあまりよくありません。

だって、仕事を決めるってどういうことか、想像できませんよね? 契約書を作らなければならないのか、仕事の細かい内容面を確認して文字に起こしたいのか、あいまいな状態になってしまいます。

「簡単にする」ではなく「説明する」

簡単で伝わりやすいからいい、というわけではありません。日本人は、このダウントランスレーティングのスキルを知ると、「何でもかんでも簡単な言い回しにすればいいんでしょ」と思ってしまう人も多いのですが、それではいけないのです。

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要領としては、「子どもに説明するように日本語を換えてみる」と考えてみてください。

子どもが「ねえねえ、病床に伏しているってどういうこと?」ときいてきたら、おそらくみなさんは「病気で寝ているって意味だよ」と答えると思います。

こんな感じで、頭に浮かんだ日本語が英訳するのに難しいと思ったら、「ねえねえ、〜ってどんなこと?」と、子どものように自分に尋ねてみてください。そうしたら必ず英訳しやすい、わかりやすい日本語が頭に浮かぶはずです。中身を説明するかのようなイメージで考えると、たどたどしい英語になることも少ないはずです。

今回お話しした「意訳」と「ダウントランスレーティング」は、私たち通訳が現場で使う高難度のスキルのように思われがちですが、実は英会話が初心者の方でも少し意識するだけですぐに使うことができる、とても有効なスキルです。

今まで英会話の学習をしてきたけれどもなかなか上達しないとお困りの方は、ぜひ「意訳」と「ダウントランスレーティング」を意識して練習してみてください。英会話力が、驚くほどアップするはずです。

牧野 智一 通訳者、翻訳家

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まきの ともかず / Tomokazu Makino

ワールドアリーナ代表取締役。常葉大学外国語学部講師。1963年、静岡県掛川市生まれ。大学卒業後、英会話のイーオンに入社し、国際ソフトボール大会における専属通訳や、プレイステーション用ゲームソフト「バイオハザード」字幕制作などを手掛ける。1996年に独立後は、元アメリカ大統領のジミー・カーター氏の会見通訳や、アトランタ夏季オリンピックのIOC公式通訳、アメリカのメジャーリーグの各球団広報通訳などを務める。現在は、第一線で通訳者として活躍する傍ら、高校や大学の教育関係者へ授業を行ったり、英語スクールで一般向けにも授業を行う。2020年東京オリンピック代表通訳。著書に『一度読んだら絶対に忘れない英文法の教科書』。

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