「それでも米国株は年内上昇する」と予想するワケ 今の市場はあまりにも悲観的になっていないか
加えて、近年は世界的に(とくに先進国において)景気の振幅が小さくなってきており、景気と金融政策の循環があまり明確ではなくなっている。それが、相場のサイクルもわかりにくくしている。
逆に、市場へのショックが「ブラックスワン」(めったに起きない想定外の事象が起きること)や「灰色のサイ」(大きな問題なのに普段は軽視されがちな事象)という形で到来して、ショック的に市場のサイクルを乱す展開もままある。つまり、ダジャレで恐縮だが「サイが来るのでサイクルが壊れる」といった次第だ。
もう1つ、相場サイクルについて言及したいのは、「どの局面も金融政策だけ、あるいは業績だけが市場を支配しているということは少なく、金融政策と業績動向の両方がつねに同時に市況を動かしている」という点だ。
例えば、金融緩和だけで無条件で金融相場になって株価が上がるわけではない。金融緩和が行われるのは景気悪化に対応するためで、緩和の開始時にはまだ景気や業績の悪化が進行し続けていることが多い。その時点ではまだ逆業績相場の終盤という形で、株価が下がっているわけだ。
そのあと、緩和が持続し、それが景気や業績を改善し始めているとの兆候が広がる、もしくは改善への期待が抱けるようになる、という段階になって、ようやく株価が上昇し金融相場に入ることになる。
2021年11月金融相場終了、カネ余り相場は終焉へ
サイクル論の留意点をいろいろと述べたが、サイクル論で相場の色合いをとらえようとすることは、過去の市場動向を理解するだけではなく、将来を展望するうえでも役に立つ面があると考える。
さて、具体的なアメリカ株の動向に当てはめると、2020年3月のコロナショックを受けて、連銀(アメリカの中央銀行)が積極的な金融緩和策を打ち出した。加えて、政府の補助金給付や失業保険給付金の上乗せも、経済全体のカネ余りを支え、それが金融相場を引き起こしたと解釈できる。
この金融相場がいつ終わったかといえば、昨年11月だろう。11月初旬のFOMC(連邦公開市場委員会)でテーパリング(量的緩和の縮小)が決定され、さらに同月末の議会証言でジェローム・パウエル議長が「テーパリング加速を検討するのが適切だ」と述べたからだ。
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