株式トレーダーもパウエル議長自身も大混乱 インフレ制御不能がもたらす予想不能という新時代

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50ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)それとも75bpなのか、ヘッドラインなのかコアなのか-。米金融政策の道筋とそれが経済に与える影響を予想しようとしているトレーダーは、15日のパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見後、混乱していると不満を漏らした。

投資の根拠とする材料がほとんどないため、すべてを売るという決定に至るまで1日もかかわらなかった。

かつてはストレス時でさえ、米連邦準備制度がどこに向かっているのか投資家が比較的確信を持てる時代があった。しかし今や、インフレが制御不能になり、リセッション(景気後退)の可能性が急速に高まる中、次に何が起こるか予想するのは不可能になっている。

iキャピタルのチーフ投資ストラテジスト、アナスタシア・アモローゾ氏はポッドキャストで「パウエル議長を含め、全ての人にとって認めるのは難しいことだが、われわれは未来を予想できないし、米金融当局もインフレを予測することはできない」で指摘。「今後インフレ率がどうなるか、われわれには分からないという認識を受け入れざるを得ない。前月よりも低くなるよう願っているが、われわれには分からないというのが現実だ」と述べた。

S&P500種株価指数は16日に3.3%下落し、2020年12月以来の安値を付けた。3日ぶりの大幅下落となったことが、最近の市場の混乱を物語っている。ナスダック100指数は4%下げ、債券、ビットコイン、S&P500種の全業種が値下がりした。

パウエル議長、景気後退招く可能性を実質的に認める-インフレ抑制で

米金融当局が来月50bpもしくは75bpの利上げを決定するかという大きな疑問については、答えがないままだ。パウエル議長が変動の大きい食品・エネルギー価格を含むヘッドラインインフレ率を重視していることも、一部で混乱を招いている。

米金融当局の予測とパウエル氏の発言で、多くの「矛盾」が表面化したと、ビスポーク・インベストメント・グループは指摘。その中の一つが、米金融当局がこれまで重視してきたエネルギーと食品を除いたインフレ率ではなく、ヘッドラインインフレ率の重要性を巡る議論だ。また、パウエル氏は75bpの利上げが普通になるとは見込んでいないとしながらも、次の瞬間には来月にその規模の利上げがあり得るとの見解を示している。

FOMC、75bp利上げ-7月は75か50bpの公算大とFRB議長 

トレーダーは、次の動きをどのように織り込むべきか、向こう6週間に発表される指標の中でどれを重視すべきか、確信が持てない状態にある。

これまでの10年間は米大型テクノロジー株の購入が中心になるなど、資産配分を巡る決定は容易だったが、今や事態は再び困難になりつつあると、アルファTrAIの最高投資責任者(CIO)、マックス・ゴクマン氏が指摘した。

原題:Stock Traders Coming to Grips With a Fed as Baffled as They Are(抜粋)

 

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著者:Vildana Hajric

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