JR九州新社長「観光列車戦略は見直しの時期に」 鉄道、不動産、ホテル…、今後の経営構想明かす

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――無人駅では、地元と連携した体の不自由な人の乗降サポートを始めましたね。

日豊本線の門川駅(宮崎県門川町)と川南駅(宮崎県川南駅)で、両町に委託して観光協会や町役場職員の方による車いす利用者の介助対応を行っている。対応していただくに際し、介助に関わる教育や研修を受けていただいた。ほかの駅については事前にお申し込みいただければ当社の社員が対応しているが、将来は地元の方にお願いすることもあるかもしれない。

――香椎線で自動運転が始まりました。

安全上の問題がないと国に認められれば、香椎線以外にも自動運転を広げていきたい。

駅近くの土地開発を推進

──鉄道以外の事業についてお聞きします。不動産事業では、開発できる土地はまだありますか。

今までは当社の土地をうまく活用して駅ビルやマンションを造ってきた。しかし当社の土地はほぼなくなった。次は駅の近くの土地を買って大きく開発していく。県庁所在地から電車で20〜30分のエリアであれば、そこに新駅を造って開発するようなことも考えていきたい。高架下の開発にも取り組んでいて、佐賀駅高架下の西側を今度リニューアルする。この付近は夜になると駅前の人通りが少なく寂しい。開発によって駅の周りににぎわいを取り戻したい。

──佐賀駅の南口に広い駐車場があります。

あそこはほかの地権者の土地。佐賀市には、市が「絵」を描いてみんなで開発をやっていきませんかとお願いしている。宮崎駅にも駅ビルを造ったが、当社はあの土地の半分くらいしか持っていなかった。残りの半分を持つ宮崎交通と共同で開発することにして、市の協力を得て当社と県が駅前広場の整備をした。皆が一緒になって取り組むことでこうした事例が生まれる。

──コロナ禍でホテルも打撃を受けました。今後の戦略は?

当社には「ザ ブラッサム」「JR九州ホテル ブラッサム」「JR九州ホテル」といったブランドがある。東京・日比谷などにあるザ ブラッサムに宿泊した人は「いいホテルだ」と言ってくれるが、認知度が低い。ブランド戦略を再構築したい。

──大株主のアメリカ系投資ファンドが利益還元を求めたことがありました。投資家は新社長に何を期待していますか。

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投資家にもいろいろいて、「配当をちゃんと出すべきだ」という人もいれば、「配当よりも新しい成長投資に資金を使うべき」という人もいる。私としては経営が苦しくても投資家には配当を出したいし、鉄道の安全維持には多額の資金が必要。社員にもきちんと給料を払いたい。

そのバランスをどう取っていくかが、いちばん難しい経営判断。いろいろな意見を参考にし、最終的には私が判断する。

(『週刊東洋経済』2022年6月11日号「トップに直撃」に大幅加筆のうえ、再構成しました)

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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