JR九州新社長「観光列車戦略は見直しの時期に」 鉄道、不動産、ホテル…、今後の経営構想明かす

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――ふたつ星の次は、どのエリアに観光列車を導入しますか。

「ふたつ星4047」は、今年3月に引退した「はやとの風」(写真)を改造する(記者撮影)

いまのところない。西九州新幹線の開業という大きなイベントがあり、それに合わせてふたつ星を導入するが、今私が考えているのは、指宿のたまて箱や「あそぼーい!」「A列車で行こう」などのD&S列車が運行開始から10〜15年と経ってくる中で、D&S列車のあり方をどうするか。指宿のたまて箱は新幹線開業の頃は平均乗車率が毎日3往復しているのに90%近くあって、予約が取れない状況だった。でも最近は、コロナ前でも乗車率が落ちてきている。そのため、次にどんなD&S列車をどこで走らせるかというよりも、D&S列車をハード、ソフトの両面からどうしていくべきかを考える時期ではないかと考えている。

――観光列車のデザインを手掛ける水戸岡鋭治さんは、高齢を理由に「ななつ星in九州」のリニューアルが最後の仕事だと発言しています。

いやいや、水戸岡さんは元気ですから(笑)。

ローカル線の今後をどう考えるか

──新幹線開業という華やかな話題の影で、ローカル線は厳しい状況が続きます。

利用者の減少が著しい線区について、線区の活用に関する検討会を沿線自治体と3年前から続けている。実は私が鉄道事業本部長だった2018年に列車を削減したが、このときには線区の収支を開示していなかった。地元から見れば「JRは儲かっているのになぜ削減するのか」となる。当社と地元の間に意識の乖離があった。

今回は収支を公表しているので、地元のみなさんに現状を認識していただけた。それを踏まえて現在は利用促進策について話し合っている段階。ただ、今後の人口が減っていくのは目に見えているので、将来にわたって持続可能にするために何をすべきか考えることが次のステップとなる。

――すべての線区で話し合いをしているのですか。

筑肥線(伊万里―唐津間)、筑豊線(桂川―原田間)、肥薩線(八代―人吉間、人吉―吉松間)、吉都線(吉松―都城間)、指宿枕崎線(指宿―枕崎間)、日南線(油津―志布志間)という7線区の沿線自治体と路線維持に向けた話し合いをしている。ただ、2018年7月の豪雨で被災した肥薩線は2つの線区とも中断している。

──JR東日本はローカル線を持続可能にする方策としてBRT(バス高速輸送システム)への転換、第三セクター鉄道への移管などを行っています。

当社も同じだ。現在被災して運休中の肥薩線を例に取れば、JR化以降、肥薩線を当社に残して、湯前線は1989年に三セク化してくま川鉄道になった。くま川鉄道は現在も高校生の朝夕の通学の足として欠かせない存在である一方、肥薩線は観光客の利用こそ多いが通勤・通学需要が大きく減ってしまった。

長い年月が経つうちに線区の使命は変わっていく。また、被災により運休中の日田彦山線は地元との話し合いの結果、BRT化することになった。地元の要望を受け、公民館や商業施設の前など駅(停留所)をたくさん設ける。利便性を高め、これからのローカル線のあり方についての1つのモデルになればよい。

次ページ自動運転「香椎線以外にも広げたい」
関連記事
トピックボードAD
鉄道最前線の人気記事