「野党不在の民主主義」が加速させる日本の衰退 野党も自民党と変わらず利益誘導を競う異様さ
そればかりか経済のグローバル化と新自由主義的経済の拡大によって日本国内で所得格差が拡大した。1990年代以降の日本社会の激変は中間層の縮小をもたらすことになった。さらに急速な少子高齢化の進展で人口構成が激変し、社会保障制度を維持することさえ困難になりつつある。次々と難題が降りかかってきているのだ。
しかし、自民党政権がこうした変化に合わせた政策の転換を行うことはなかった。成長期と変わらぬ積極財政を維持したため、財政の収支バランスが大きく崩れ世界最大の累積債務を抱えることとなった。
こうした現象は日本だけでなく主要先進国に共通する現象だ。中間層の縮小の結果生まれたのが、目先の利益ばかりを追いかけ、極論に傾斜しがちな世論であり、政治家や政党がそうした世論に合わせた主張をするポピュリズムが台頭した。日本は欧米諸国のようなポピュリズムの傾向は強くないが、それに代わって改革よりも現状維持を求める保守的傾向がすべての世代で強まっている。
若者世代は民主党政権の失敗で野党に失望
かつて世代別の自民党支持率は、年齢が高くなるほど支持率も高くなる右肩上がりが特徴だった。若い世代は現状維持ではなく変革を求めるため野党支持が多かった。
ところが近年の自民党支持率はU字型で、若い世代と高齢者で高くなっている。高齢者が変化を嫌う傾向は昔と変わらないが、20代や30代の若い世代の自民党支持が高いのは、停滞の時代に生まれ育ち、日本が敗戦後の窮乏から経済大国に発展したという成功体験を知らないためかもしれない。さらには2009年から2012年までの民主党政権の失敗の記憶が若者の間では鮮烈なのかもしれない。
「物事を変えてもよくなるとはかぎらない」「今のままのほうが安心できる」。今はこんな国民感情と、既得権を維持し改革を避けることで政権を維持しようという自民党の対応が一致する。ゆえに自民党支持率が高止まりしているのだろう。しかし、こうした政治が生み出すものは日本の衰退の加速であることは明らかだ。
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