役所広司「仕事は怠けようとする自分との戦い」 準備をする中で必ず何かのヒントが見つかる

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――30代、40代で、ほかに仕事でしておいてよかったことはありますか。

同じ夢を志す、仲間との関係づくりでしょうか。先ほども言いましたが、予算が少なく貧しく厳しい映画の現場には、映画好きの人たちが、映画に夢を持って集まります。僕の場合、同い年ぐらいのスタッフが多く、一緒に仕事をする中でお互いにどんどん成長していく姿を目の当たりにし、仲間意識も芽生えていきました。低予算だったので、ロケ弁がのり弁だったのもいい思い出です。

そして一緒に作品を作ってきた彼らが今、出世してオファーをくれることもある。若い頃、無駄に時間を費やして酒を飲み、仲間をつくってきたからこそ今の自分があると思っています。酒席をともにするときは、昔も今も「とことんつき合うぞ」というスタンスは変わりません。飲む体力は年齢とともになくなり、老いを感じていますが(笑)。

――今年66歳になりましたが、精力的に仕事をしている役所さんにも老いを感じる瞬間もあるんですね。

撮影の合間や日常生活で少し運動をしてみると、体力や筋力が落ちていると体感しますね。これからちょうど、若い頃から年代を重ねる役に着手するのですが悩んでいます。若い頃の役をどのように再現するか、という点で。シワをどう伸ばすかなど考えなければいけないな、と。こういう事柄を考えるようになったときも、老いを感じます。「僕が若者を演じるのは無理がある。CGで処理してほしい」と思うこともありますが(笑)、最善を尽くします。

(撮影:梅谷秀司)

――役所さんが、仕事で最善を尽くすためにしていることは。

アスリートのような言い方かもしれませんが、なまけようとする自分と戦うことです。僕は(東京都)千代田区役所の土木工事課に勤務した経験がありますが、どんな仕事でも経験を積めば、準備をしなくてもある程度の成果を上げられるようになったりします。ですが、準備をしている中で、何か見落としているヒントに気づくことがある。準備をすると、演じるときに必ず役立つんです。

ですから日常生活でも、「役に活きる材料は何かないか」と、常に考えるクセがついています。年齢を重ねるたびに、楽なほうに流れようとする自分がいることを痛感するので、本番に向けての準備は、自分と戦いながら日々行っています。

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