現状どの自治体も正規教員と非正規教員を雇っている。毎年度、定年退職や産休・育休・病休の増加などによって正規教員に一定数の欠員が生じる。この分は、毎年夏に行われる教員採用試験の合格者によって補充される。つまり、正規教員だけに限れば、教師不足は生じていない。
問題は全体の2割近くを占める非正規教員のほうだ。こちらも毎年度、一定数の離職者が出るが、この分はどの自治体も非正規教員で補充している。具体的には、教員採用試験の不合格者などに声をかけ、ごく簡単な選考を通じて臨時的任用教員(常勤講師)として雇用している。
ところが昨今は教員採用試験の受験者数が減ったことで、不合格者の数がそもそも減少している。加えて不合格者の中には、民間企業に就職する者も少なくない。その結果、多くの自治体が辞めた非正規教員の代わりを補充できないでいる。
この状況を改善するための方策は、大きく2つある。1つ目は採用試験の受験者を増やすこと、2つ目は採用試験の合格者数を増やして非正規率を下げることだ。
1つ目については昨今、教員の過酷な勤務実態が明らかになり、受験者数は減少し続けている。文科省では2021年からツイッターなどで教職の魅力を教師に発信してもらう「#教師のバトン」プロジェクトを始めた。が、その狙いに反して過酷な労働環境を訴える投稿が相次ぎ、状況は好転するどころか悪化傾向にある。
2つ目の採用試験の合格者を増やすことは、各自治体の裁量次第で実施できる。だが、各自治体が抱える厳しい財政状況から、現状はどの自治体もそうした方向性に舵を切っていない。
小泉内閣が推進した「三位一体改革」により、2006年に義務教育費国庫負担金が「2分の1」から「3分の1」となって以来、各自治体の教育財政は脆弱なものとなっているからだ。加えて少子化が進む中で、どの自治体も将来的な人員余剰を恐れ、教員の一定数を非正規で雇用して「調整弁」としている。(詳細は「文科省が蓋をする『教師の非正規率』の衝撃実態」)
「講師登録」される非正規教員が減少
採用試験に不合格になった人の多くは、臨時的任用教員として働くことを希望し、教育委員会に「講師登録」を行う。そして、教育委員会はこの「講師バンク」から適任と思われる人に声をかけ、簡単な選考を経て採用する人を決める。
ところが、昨今はこの講師バンクの登録者が少なく、あっという間に不足する状況が各自治体で相次いでいる。
「4月を迎える前の段階で、うちの自治体の『講師バンク』は貯金ゼロの状態だと聞いた」
「毎年、うちの学校では4月頭の職員会議で、『教員免許状を持っていて働ける人がいたら教えてください』と校長が言うのが恒例となっている」
これらはいずれも、現場の管理職や教員の証言だ。冒頭のように学校だよりで教師を募集するほど、教員不足は深刻化しているのだ。
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