財政健全化論こそが「無責任の極み」である理由 増税は「財源の確保」ではなく「財源の破壊」だ
政府は6月7日「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)」を閣議決定したが、その原案に対しては、自民党内で積極財政を求める議員らと財政健全化を重視する議員らとの間で激しい論戦があり、調整が難航したと盛んに報じられている。
積極財政に転じたわけではない
しかし、ふたを開けてみれば、骨太方針には、「令和5年度予算において、本方針及び骨太方針 2021 に基づき、経済・財政一体改革を着実に推進する」と明記されている。何のことはない、昨年の骨太方針と同じだというのだ。
昨年の骨太方針とは、社会保障経費の伸びは高齢化による自然増の範囲にとどめ、そのほかの3年間で計1000億円の伸びに抑えるというものである。
もっとも、この文言には、自民党内の積極財政派に配慮して、「ただし、重要な政策の選択肢をせばめることがあってはならない」との一文が調整の最終局面で追記されたという。しかし、しょせんは「ただし書き」にすぎない。そもそも「重要な政策の選択肢をせばめること」が書いてあるのがおかしいのだ。
要するに、積極財政に転じたわけではないのだ。
今年は、ロシアによるウクライナ侵攻という世界を一変させる大事件が起きた。防衛費の大幅増、食料やエネルギーの安全保障の強化、スタグフレーション対策など、早急に着手しなければならない課題が山積している。経済財政政策の大転換が必要なのだ。それにもかかわらず、昨年の骨太方針と変わらず歳出抑制を継続しようというのだから、驚きだ。世界で何が起きているのか、まったくわかっていないのではないか。
それでもなお、この「骨太の方針」に関しては、マスメディアを中心に、財源に関する批判が向けられている。
例えば、朝日新聞は社説で「歳出を増やすべき『重要な政策』があるのは否定しない。ただ、その際はその分の財源を同時に議論すべきだ。歳出拡大だけを言うのでは『財政運営』の名に値しない」と批判している。はっきりとは書いていないが、朝日新聞は増税を主張しているわけだ。
確かに、歳出を増やすならば、その裏付けとなる財源を示さなければ無責任であろう。財源論を先送りしてはならない。
では、早速、責任ある財源論をしてみよう。
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